北海道大学大学院教育学研究院身体教育学研究室が、現在クラウドファンディングに挑戦中です。子どものことばとからだを育む「お外で読む絵本」を届けたい!というコンセプトで、屋外で運動遊びを促す絵本を幼稚園や保育園に届けるのが目的です。プロジェクト責任者の崎田嘉寛さん(北海道大学大学院教育学研究院准教授)に本プロジェクトに至った経緯、そしてプロジェクトにかける思いを伺いました。
【奥本素子・北海道大学CoSTEP】
そもそも崎田さんがこのクラウドファンディングを企画したきっかけを教えてください。
元々、研究室のメンバー全員で取り組めるプロジェクトがあればと思って立ち上げたのがこのクラウドファンディングです。私はずっと野球をやっており、また体育の研究者でもあります。チームワークが個人の能力以上の部分を伸ばせるというのは実感していました。チームで取り組め、さらに社会貢献にもつながるクラウドファンディングは前々から興味がありました。
2022年11月より北海道大学がクラウドファンディングサービス「READYFOR」と連携したことをきっかけに、本格的にクラウドファンディングに研究室で挑戦することになりました。
今回立ち上げたプロジェクトはどのようなものですか?
私は体育の歴史を研究しています。戦後直後の体育の授業は、体育用具も十分ではなく、しかも一度に50名以上で運動する必要がありました。そんな中、考えだされたのが「模倣物語遊び」という手法です。これは物語の中の主人公、例えば浦島太郎になってみようと声掛けして、浦島太郎だったらどのように海に潜ったのかな?など想像しながら体を動かしていきます。その後、体育教育の環境も改善され、本手法は徐々に忘れられていったのですが、自分の想像力と共に体を動かす楽しい手法だなと感じていました。
この「模倣物語遊び」の手法を活かして、保育園や幼稚園の子供たちが、物語を読み聞かせてもらいながら体を動かす「お外で読む絵本」を作るのが、このプロジェクトの目標です。保育園や幼稚園の先生は読み聞かせはとても上手です。一方、就学前には体育という特定のカリキュラムはありません。就学前の子供たちが、効果的に体を動かす教材はないかな、ということで、この絵本を思いつきました。
中身は子供たちが大好きな海の生き物です。タコやワカメ、アザラシなどいろんな生き物の動きを真似しながら、体を動かしていきます。単純な動きのため、小さな子どもでも簡単に真似ができるようになっています。
崎田さんのゼミが一丸となって取り組まれたのですか?
元々動きの部分は未就学児の運動を研究してくれている大学院生が考えてくれました。そして絵本の言葉の部分は、運動科学ではオノマトペを使って動きを伝えるという研究知見があります。その知見を活かして、大学院生が文章を考えます。また絵は、大学院生の妹さんが描いてくれるとのことで、研究室のみんなで取り組む予定です。
クラウドファンディングに挑戦中ですが、皆さんのチームワークはいかがですか?
クラウドファンディングを立ち上げたこと自体が僕らの学びになっています。今日の取材のように、クラウドファンディングにまつわる自分たちの研究を尋ねられることによって、自分たちの活動を振り返るきっかけになっています。また、自分たちの活動の意義もきちんと伝えることが求められ、改めてすごく難しいな、と感じています。
ただ、この活動を通して保育園の先生や、水族館の人たちとつながることもでき、新たな出会いもありました。
運動の動きを言葉と絵で伝えることで、親しみやすい表現になっているんですね。
私自身、体育は授業の中だけの活動ではないと思います。私はこれまで学校や運動部の体育の指導の在り方に疑問を持っていました。勝利だけをめざすような指導の方法によって、みんなが運動から遠ざかってしまうのではないかという懸念があります。また、最近の科学的知見や数値による指導も必要だとは思いますが、そのような指導だけで正確に体を動かすことができるのかという疑問も残ります。楽しく、そして自分の想像力を使いながら運動を学んでいく、これまでの体育とは違う体育の在り方をこのプロジェクトで提案できればと思っています。
現在の支援状況はどうでしょう?
現在、目標の5割程度の支援をいただいています。ただ、支援していただけるだけでなく、私たちの想定以上の活用を支援者の皆さんから提案いただいています。例えば特別支援の先生から使えそうというお声をいただいています。また国際的な研究会で紹介したところ、海外からも活用したいという意見をもらいました。海外で使う場合は、翻訳の支援も行いたいと思っています。
そして支援で人気なのは、「お外でよむ絵本」のキャラクターの命名権です。これは、スポーツ施設のネーミングライツが人気であることをヒントに考えたアイデアです。このクラウドファンディングは少額なため、自分たちでこのチャレンジを広めていかないといけません。だからこそ、クラウドファンディングの仕組みを学んだり、自分たちで広報方法を模索したりと、試行錯誤で進めています。
まだ絵本は完成していないんですよね?
クラウドファンディングが成功したら、本格的に絵本作りが始まります。どんな内容にしようか、そしてどんな形の絵本がいいのか、メンバーや専門家に相談しながら作っていきたいと思っています。今の絵本の想定は、外で読み聞かせができるように大きく、しかも丈夫な造りを想定しています。絵本を販売する予定はありませんが、クラウドファンディングで一定額を寄付してくださった方には、届けたい園に絵本をお送りする計画です。
クラウドファンディングが成功したら、さらに新たな挑戦が始まるんですね。
私たちのゼミは、元気だけが取り柄のゼミです!クラウドファンディングが成功したら、この手法の効果や活用の在り方についても研究していきたいと思います。クラウドファンディング成功、そしてその後も私たちらしく走り続けようと思っています。
崎田さんがチャレンジするクラウドファンディングは、ただいま受付中です。
ぜひ応援を!
プロジェクト名:子どものことばとからだを育む「お外で読む絵本」を届けたい!
期 間 : 2023年9月1日(金)〜2023年10月31日(月) 23:00
コース : 5000円/1万円/1万5千円/3万円/5万円/10万円
目標金額 : 140万円(目標金額以上が集まった場合のみ成立のAll or nothing方式
崎田さんの研究計画やクラウドファンディングの詳細はこちら