2015年9月29日、公益財団法人日本デザイン振興会が主催するグッドデザイン賞の「地域・コミュニティづくり/社会貢献活動」の部門において、CoSTEPの応募作品「触媒としてのサイエンス・カフェ札幌 ~北海道大学 高等教育推進機構 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)の10年間の取り組み~」が受賞する運びとなりました。
グッドデザイン賞は1957年に通商産業省(現在の経済産業省)によって「グッドデザイン商品選定制度」として創設され、およそ60年近く継続されてきた賞で、作品は有形無形を問わず、プロダクトデザインから社会貢献活動といった取り組みまで幅広く対象としています。
(山口佳三総長、新田孝彦理事、松王政浩CoSTEP代表とスタッフで受賞記念撮影)
日本でサイエンスカフェという文化が徐々に広がり始めた2005年から現在にいたるまで、CoSTEPは紀伊國屋書店札幌本店1階のインナーガーデンにて「サイエンス・カフェ札幌」を、85回に渡り開催してきました。CoSTEPではサイエンスカフェをはじめとする科学技術コミュニケーション活動を広く周知し、認知度をさらに高める目的で、今年4月に2015年度グッドデザイン賞に応募することにしました。
サイエンス・カフェ札幌が無形のデザインである社会貢献活動としてグッドデザイン賞を受賞した意義及び受賞後に開催された展示会などについて、CoSTEPのスタッフにお話をうかがいました。
サイエンス・カフェ札幌の特色
応募作品名に「触媒としての~」と添えてあるのはサイエンス・カフェ札幌が研究者と市民をつなぐハブとなった結果、単なるサイエンスカフェに留まらず、周囲に好影響をもたらし、新たなプロジェクトや出会いを生み出していったためです。具体的にはサイエンス・カフェ札幌を通じて知り合った仲間が集って、新たなコンセプトのサイエンスカフェを企画したケースや参加者として来場した学生がゲストの研究者の話を聞いて、その後その研究室に入って活躍したケースなどが挙げられます。
また、教育的な側面では受講生が主体となって運営されている点がとても重要です。北海道大学の大学院生を中心に構成されている受講生が研究者と市民をつなぐ役割を経験することで、将来その受講生が研究者になった時、自分の研究テーマを基に熱心なアウトリーチ活動に取り組んでもらいたいと私たちは考えています。10年以上の実績のあるCoSTEPにいて、「継続は力なり」という言葉を痛感する瞬間があります。サイエンス・カフェ札幌を経験した修了生が各地でサイエンスカフェなどのアウトリーチ活動を活発に行い、その成果を実際に耳にする時です。これは“持続可能な実践的教育”が成立している状態といっても過言ではありません。
ひとつの事柄がそれだけで完結せず、有機的な結びつきから連鎖的に新たなシーンを生み出していくサイエンス・カフェ札幌の特色とはまさにこの触媒の機能であると考えます。
受賞の意義
サイエンス・カフェ札幌がこれまで積み上げてきた成果に対し、有形無形に関係なく総合的なデザインを評価・推奨する日本で唯一の制度であるグッドデザイン賞から外部評価を得られたということが最も重要であると考えています。今後もこの路線を継続しながら、その時々によって創意工夫を加え、CoSTEPのサイエンス・カフェ札幌は進化していくことになります。
北海道大学の組織として初の受賞であるという点も重要です。CoSTEPは科学技術コミュニケーションの教育研究活動を進めていますが、同時に教育を通じたアウトリーチ活動を担っている組織でもあります。グッドデザイン賞の受賞によって、北海道大学の社会貢献活動に対する姿勢を全国に示すことができたのは意義があったと考えます。
目に見える効果として、今後のサイエンス・カフェ札幌にて、Gマークの自由な使用が可能になった点が挙げられます。公益財団法人日本デザイン振興会によれば、Gマークの認知度は87%を超えているとのことでした。サイエンス・カフェ札幌のチラシ、ポスター、WebページでGマークを活用することで、これまで以上に強く訴求できることでしょう。
(グッドデザイン賞のGマークを掲載したチラシ。CoSTEPデザイン実習の受講生が制作)
*グッドデザイン賞の受賞報告は全3回の連載となります。第2回目は「審査委員の評価と受賞展」です。