第61回北大祭では、現在放送中の朝の連続テレビ小説「なつぞら」に柴田夕見子として出演する福地桃子さんのトークショーが開催されました。ヒロインと姉妹のように育ちながらも、夕見子は自らの人生を切り開くため、北大を目指し、猛勉強の末、入学します。舞台は昭和30年代、女性の4年制大学進学率は18歳人口のわずか2%程度 1)でした。
北海道大学で女性が初めて入学したのは大正7年(1918年)、当時の総長である佐藤昌介は女性の入学に積極的でした。北星女学校の教員を務めていた加藤セチはその呼びかけに応答し、北大の入学を目指します。しかし、北大内部からの反発は激しく、セチは正規の学生という身分ではなく、「全科選科生」として入学しました。
彼女によって開かれた北大の門戸、その後も徐々に追随する女性が北大に入学し、とうとう昭和5年(1930年)、吉村フジが北大で初めて女子学部学生として理学部に入学します。
女性に大学という学びの場が制度として開放されたのは、時代も下って第2次世界大戦後でした。昭和20年(1945年)、男女間における教育の機会均等、教育内容の平準化などを実現するため「女子教育刷新要綱」が閣議決定され、女性の大学入学を妨げている規定を改め、大学における共学制の実施が国の方針として固まりました。
その約10年後、夕見子は北大に入学を果たすという設定になっています。ドラマでは夕見子の北大シーンは登場しませんが、東京に出たヒロインに「負けんなよ!」と一言電話するというシーンがありました。その一言の裏に、彼女の北大での奮闘ぶりを推し量ることができます。
現在、北海道大学大学文書館では、沿革展示室で旧制大学期の1918~1945年に焦点をあてて、企画展示「女性が切り開いた研学の場――女性の北大入学100年」が開催されており、8月からは新制大学期の資料も新たに加わる予定です。
重い扉を徐々に開けていった先輩たちが、北大で明るく、前向きに学び、研究した軌跡が展示されています。加藤セチの入学から100年、北大の在学者の男女比率は、学部の在学者において約3割に達しました2)。数だけの平等ではなく、学生の意欲や努力が平等に報われる学び舎であることが重要だと感じます。
注・取材協力:
- 文部統計要覧昭和31~41年版
- 北海道大学概要 2018-2019
- 北海道大学大学文書館