昨年11月、高校1年生の遠藤龍之介さん(北海道登別明日中等教育学校4回生)が北大札幌キャンパスを訪れました。北大生に取材をして記事を執筆することで、「自ら情報を集め、選び、伝える」2日間のインターンシップを体験するためです。今回は、金属ナノ粒子を使った材料の研究をしている秋田郁美さん(工学院 材料科学専攻 博士後期課程2年)のもとへ取材に伺いました。モノづくりに興味があるという遠藤さんは、秋田さんの研究内容だけではなく、物事の考え方についても質問を投げかけていました。研究に向き合う先輩の姿勢は、遠藤さんの目にどう映ったのでしょうか。遠藤さんが執筆したレポートをご覧ください。
「モノづくり」から入ったナノ粒子の世界
今回、ナノ粒子の世界を研究する、秋田郁美さんにお話を伺いました。子供の頃から工作が好きで大工や建築士に憧れ北大へ入学。その後、「自分一人の力では学べないようなこと」、という基準で材料科学を専攻し、現在は研究に没頭する日々を送っています。多少の方向性は変わっていったものの「モノづくりという一貫したレールの上に乗っている」と自信を持って話されました。
(研究しているナノ粒子を説明する秋田さん)
肉眼では見えない小さな粒子
車の触媒での排気ガス処理やがん細胞の位置を特定することに使われたりと、幅広い分野で活躍するナノ粒子。主に金や銅、プラチナといった、いわゆる金属ナノ粒子を用いて研究されています。秋田さんの研究室ではナノシートという薄いシートの両面に金属ナノ粒子を集合させ、原子レベルの分解能をもつ電子顕微鏡で多角から観察、それを基に平面に見えていたものを立体化し3次元構造を解明しました。今後は、ナノシートの表面に集合するナノ粒子の配列(密度や向き)を超精密なナノスケールで制御していくそうです。この配列技術は上手くいくと「人工光合成」に応用することができ、環境問題の解決に繋がるかもしれません。
(実験室にお邪魔し、実際にナノ粒子化した金属を見せていただきました)
「役に立つ」を探求する
大学で研究をしていくと目先の研究にはどんどんハマっていきますが、一体その研究が我々の生活や社会にどう結びつくのかということから目が離れがちになってしまいます。そこで秋田さんは、自分の研究がどう役に立つのかを忘れずに研究することが大事だと話されました。さらに、役に立つとはどういうことなのかを民間企業に勤めて探していきたいと今後の話もしていただけました。
自分を客観視して考えることは非常に大切で、特に大学にいると大学以外の人との関わりがどうしても減ってしまいます。そういった面で見ると、バイトのような大学以外の場所に身を置くことは、自分と違う道を歩んできた人の立場から自身を見つめ直す良い機会になるそうです。
(原子レベルの分解能を持つ電子顕微鏡。他研究者との共同利用のため、使用できる時間が決まっています)
翌日、秋田さんが研究で使っている電子顕微鏡を見学させていただきました。限られた時間の中で成果を出さないといけない大変さを知りました。電子顕微鏡の開発や整備の技術があってこその研究であることも感じました。
(記事執筆をする遠藤さん。取材も含め、2日間で完成させます)
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秋田郁美さんの所属研究室はこちら
北海道大学工学院材料科学専攻マテリアル設計講座
先進材料ハイブリッド工学研究室(米澤徹教授)
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この記事は、北海道登別明日中等教育学校のインターンシップにCoSTEPが協力して実施した成果の一部です。
【取材:遠藤龍之介(登別明日中等教育学校4回生)+CoSTEP】