札幌生まれ、札幌育ちの藤野真一郎さん。教育学部で社会教育を専攻されていました。学生時代に、授業の一環で恵庭市の社会教育状況について調べたことがきっかけで、恵庭市役所に入所。現在は 恵庭市教育委員会教育部 社会教育課で、地域づくりの活動に携わっています。
恵庭市に魅かれたきっかけ
3年生のときに受けた調査実習の対象地域が、たまたま恵庭市の商店街でした。その商店街は、活性化のために地域住民が学習活動をしていました。他の商店街の視察や、専門家を招いた講演を行っていたのです。それらの学習活動を支援していたのが、恵庭市役所経済部の職員。そこではじめて「自治体職員はこういう、社会教育にかかわる仕事ができるのか」と知り、心を惹かれました。その後、社会教育のゼミで恵庭市をテーマに卒業研究を行い、「恵庭市の自治体職員になりたい」と思うようになりました。就職活動は恵庭市役所一本。自分の専門が将来に結びついて、ラッキーだったな、と思っています。
やりがいのある、自治体職員という仕事
最初は「花と緑の課」に配属されました。ここで、「自治体職員は社会教育にかかわる仕事ができるのでは」という思いは、確信に変わりました。恵庭市はいまでこそ、ガーデニングや花の街として有名ですが、最初はガーデニングを一生懸命やっている市民の方と、自治体職員がともに学び合いながら地域づくりをしていったのです。これも、社会教育の一つのかたちだと思っています。
次に配属されたのは「環境課」でした。こちらでは、ある地区を鳥獣保護区にするかどうか、という案件に取り組みました。保護区にするかどうか判断するためには、動植物調査をする必要があります。最初はそのような調査を専門民間コンサルタントに委託しようと考えました。しかし、地域の環境NPOに相談したところ「自分達でできるし、蓄積したデータもある」と聞き、彼らに委託することになりました。自治体職員も地域のことを考えているのですが、それと同じぐらい恵庭の街のことを真剣に考えている市民もたくさんいることを知ることができました。
社会教育事業を通じて地域づくりを
その次に配属されたのが、今の社会教育課でした。でも最初は、社会教育事業に矛盾を感じていました。社会教育事業として開催するイベントの多くは、定員があります。20名ぐらいの子供たちのために税金を使うことが、納得できなかったのです。しかし、この事業が、参加した子供のためだけではなく、事業を通じて恵庭の街づくりに貢献できるということに気づきました。
たとえば、「食の体験ランド」という社会教育事業があります。これは、農業に従事する若者が集まる「ルーキーズ」という団体が中心になって行っています。食の体験ランドの企画や、農業に関する勉強会を楽しみながら行っていくうちに、最初は13名だったルーキーズのメンバーが、34名まで増えました。これは、「食の体験ランド」という事業を通じて、恵庭の農業を支えてくれる若手が活性化し、地域づくりにつながった事例の一つです。
自治体職員の仕事は、このように、どの課に行っても社会教育に関わることができます。社会教育のゼミに入ったとき、「社会教育とは何か」と先輩に訪ねたことがあります。みんな口をそろえて「社会教育とは“なんでもあり”なんだ」と言っていました。今なら、私もそう答えると思います。仕事の中では悩むことも多いですが、スワヒリ語の格言で「道に迷うのは、道を知ること」という言葉があるそうです。それに、迷うのも一人じゃない。とても充実しているんです。
「知らないことを知った」学生時代
大学では、体育会のバスケット部に所属していました。小学校のころからバスケットをやっていたのですが、大学の部活ではじめて大会の運営(通称:学連)にかかわりました。4年の時には学連の委員長をやらせていただいたのですが、とても大変でした。会場を取る、報道機関と連絡を取る、後援をお願いする。これらの活動を主体となって行うのは、初めてだったのです。この経験を通じて、「なんて自分は社会の事を知らないんだろう」と痛感しました。でもこの時の経験が生きていると思うこともあるし、何より30名の学連のメンバーと挑んだことで、「自分は一人じゃない」ことを知ることができました。学生のみなさんも、大学生活の中で培った人と人とのつながりを、これからも大事にして欲しいですね。