札幌市南区真駒内、南郵便局のすぐ西に、時代を感じる美しい建築物があります。こちらは「エドウィン・ダン記念館」といい、北海道の農業・畜産の普及に努めたエドウィン・ダンにまつわる資料や物品が展示されています。このエドウィン・ダン、札幌農学校やクラーク博士とも深い関わりがあるのです。
(館の建物はダンが1880年に建てたもので、登録有形文化財に指定されている貴重な建築物です。)
ダンは1873年にアメリカから日本へやってきて、クラーク博士が札幌農学校に迎えられた年と同じ1876年に札幌に転勤してきました。同館運営委員会の園家廣子さんによると、クラーク博士はダンの能力を非常に評価していて、当時の開拓使次官・黒田清隆との間で交わされた、「ダンを部下にしたい」「彼には重要な役割があるからだめだ」といったやりとりが記された書簡が残っているとのこと。
(左:クラーク博士、中:ダン、右:札幌農学校で教鞭をとったデビッド・P・ペンハロー)
クラーク博士の直接的な部下にはなりませんでしたが、札幌農学校との繋がりは残ります。ダンはモデルバーンの一部の設計にも関わっています。また札幌農学校卒業生との関わりも深く、特に1期生の伊藤一隆は、北海道庁の役人として北海道の水産分野の発展に尽力したのち、ダンに強く請われて新潟での石油事業に携わり、ダンの右腕となって活躍しました。
(ダン邸の向こうに見える、当時の札幌農学校周辺の風景)
館内の展示には、ダンが活動した時代の写真も多く、中には建学当時の札幌農学校の姿が写っているものもあります。また直接の関わりでなくても、札幌農学校の置かれていた時代背景を学ぶこともできます。現在は新型コロナウィルス対策のため、館内の案内や資料室の公開など一部行っていないものもありますが、中の展示や建物の雰囲気を味わうだけでも楽しむことができます。
そして興味を持ったものについて、さきほどの園家さんに質問すれば、その詳細だけでなく、世代を超えた人のつながりの物語を伝えていただけます。その博識さに驚くことでしょう。
(館の隣にあるエドウィン・ダン記念公園も、豊かな緑、当時の水路の面影を残す池、ダンの銅像などもあり、オススメです。)
北大と縁のある穴場スポットとして、近くを訪れた際はぜひ立ち寄ってみてください。