香港の民主活動家である周庭さんが8月10日に逮捕され、11日深夜に保釈されました。周さんは本学公共政策大学院(略称HOPS)のフェローであり、広い意味で本学のコミュニティの一員といえるでしょう。HOPS院長の遠藤乾さん(教授)は、これまで周さん本人の利益保全のために発言を自制してきた経緯がありますが、今回の事態にあたりコメントを頂くことができました。
周庭さんとHOPSとの関係について教えてください
HOPS独自の制度であるグローカル・フェローに、昨秋より2021年度いっぱい就いておられます。自由や民主を求める若い世代の政治参加のあり方について、本学学生に対して講演の機会を設けようとしていましたが、渡航を禁じられて実現できずにいるのが残念です。
逮捕と保釈は中国政府のどのようなメッセージと理解できるでしょうか
香港民主化勢力の(日本という主要国における)象徴としてやり玉に挙げられたのではないでしょうか。保釈しても起訴に向けた動きは止まっておりません。
今後の懸念、周庭さんや民主活動家の状況は
そもそも、周さんがしてきたことは犯罪ではありません。ごく普通の人権と自由を守るよう、非暴力を貫いて運動し、香港と世界に向けて発信したに過ぎません。そうした動きを弾圧するのは、世界人権宣言はもちろん、一方的に制定された香港国家安全維持法を含め、中国の法規範にも反します。外国の個人や機関と接触があっても、それは自由に認められるべきことです。いったいどの行為が罪にあたるのか、具体的な根拠を提示することなく逮捕するのは、正義に反します。そうした弾圧が他の人びとにも広がり、世界的な大国となった中国を起点に、香港というゲートウェイを通じて、人権抑圧が世界各地に浸透するのを許してはなりません。
HOPSとしての今後の対応は
HOPSとしてできることは限られておりますが、フェローである周庭さんに対して可能なサポートのあり方を探っていきたいと思います。
【川本思心・CoSTEP/理学研究院 准教授】