夕日の中に、羊が一頭。群れから外れて佇んでいました。
25年前の今日7月5日は、羊のドリーの誕生日です。ドリーは、成獣の体細胞の核移植によって誕生した初めての哺乳類です。この日を境に「クローン」はSFではなくなりました。畜産の効率化が期待されただけでなく、死んだペットの再生や人間の複製でさえも現実のものになるのでは、と多くの人が感動し、そして戦慄しました。ドリーの誕生は確実に科学の時計を進め、それに伴って問われる倫理について、おそらく世界中が自分事として考えさせられた事件でした。
6歳になったドリーは進行性のヒツジ肺腺腫を患い、2003年2月14日、安楽殺により死亡しました。細胞を再生する技術は、時代とともに様々にアレンジされ形を変えて、現在も研究が続いています。
あれ以来、羊という動物の背中には、強い光と影がちらついて見えます。