…したわけではなく、実はこれは1890(明治23)年4月に牧場を襲い、札幌市の手稲駅周辺で屯田兵に射殺されたヒグマの剥製です。北海道大学植物園博物館の入り口に展示されています。
【池田貴子/CoSTEP特任講師】
今年6月にヒグマが札幌東区の住宅街に現れ、住民や自衛隊員4人に重軽傷を負わせ丘珠空港に逃げ込んだところを射殺される、という前代未聞の事件が発生しました。実は、143年前にも同じ丘珠村でヒグマによる凄惨な事件が起きています。その剥製が北大の植物園に保管されていることをご存じでしょうか(一般展示はされていません)。
1878(明治11)年1月、丘珠村(現在の札幌市東区丘珠町)でヒグマが開拓民の夫婦らを襲い、死者3人、重傷者2人という被害を出しました。猟師が冬眠中のヒグマを仕留めそこね、手負いになったのが発端です。「札幌丘珠事件」と呼ばれ、このヒグマは北海道で最も古い剥製として胃の内容物とともに植物園博物館の収蔵庫に収められています。
いよいよ北大キャンパスにヒグマが出没してもおかしくない、と思ってしまうほど、今年は街の中心部でのヒグマの目撃が相次ぎました。2021年度のヒグマによる死傷者は、統計開始の1962年度以降、史上最多です。
いまや道内の隅々まで警戒を欠かせない存在となったヒグマ。あまり知られていませんが、植物園内の博物館には頭骨や全身骨格も展示されていて、ヒグマの標本展示に関しては総合博物館よりも充実しています。
これからはヒグマが冬眠に向かってさらに活発になる時期。気を引き締めるためにも、北大植物園博物館でリアルなヒグマの存在感を確かめてみてはいかがでしょうか。
※取材は緊急事態宣言発出前に行ないました。新型コロナウィルスの感染状況によって、開館期間が変更になる可能性があります。Webサイトなどでご確認ください。