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#164 畑から食卓まで、北海道の食材を考える

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、飲食店は長期の営業自粛や時短営業を要請されました。その裏で、飲食店に食材を提供する北海道の農業も影響を受けました。その一つが食材の余剰。農業を経済的観点から研究する農業経済では、食材の流通や消費の問題にも迫ります。農業経済の研究者である北海道大学 大学院農学研究院 准教授の小林国之さんに、北海道の食材をどう上手に経済の仕組みにのせ、無駄なく消費できるのかについて伺いました。

【奥本素子・CoSTEP准教授】

小林国之さん
小林さんは「北大マルシェ」という道内の生産者の方が北大構内で実際に農作物を販売するイベントを担当されていたりと、北大と農家をつなぐことに取り組まれています。やはり食べることが好きだから農業の研究をされているんですか?

もちろん食べることは楽しいことですが、生産者の方がユニークで、生産者の方々を研究したくて農業経済という研究を行っています。農業はどういう人が働いて、どのように支えられて、農作物が消費者の人にどう届けられているのか、という流れがあまり見えていません。それをどうにかしたいなと思って北大マルシェだったり、研究を行っています。

印象的な農家の方もたくさんいますよ。何のために農業をやっているのか、という哲学を持っている方もたくさんおられます。その方たちの話を聞くと、「働くとは何か」ということを改めて考えさせられます。

出張ピザ窯も出店された2016年の北大マルシェの様子
農業と経済の関係を研究する農業経済ってどんな研究なんですか?

農業経済では、色々な研究のアプローチがあるんですが、私は農業の現場でどういう課題がおきているのかというのをフィールドで調査し、課題の要因や解決の糸口を探っています。

いくつかの研究テーマを並行して進めているんですが、北海道は酪農業が多いので酪農をテーマにすることも多いです。その中で働く人たちが幸せかどうか、というのも大きなテーマです。

北海道の農業も高齢化が進み人材不足が進んでいます。一方で、北海道の酪農業は規模が拡大して一戸当たりで生産される生乳生産量は増えています。ただ、乳製品は現在供給過剰で、現在結構余っているんです。

えー、そうなんですね。少し前までバター不足が言われていたのに。

今回の余剰は新型コロナウイルス感染症拡大による外食産業の需要が減ったことが大きいです。これまで外食産業で消費されていた乳製品が余っているため、外食産業の大量消費を前提に作っていた乳製品の行き場がなくなってしまったんです。

農林水産省 牛乳乳製品統計より 北海道の生乳生産量と都府県全体の生乳生産量のトレンド、都道府県の生乳生産量が落ち込む中、北海道の生乳生産量は増えていることが分かる
そもそも北海道の酪農はなぜ規模を拡大しているんですか?

10年ほど前から牛乳が足りないという状況が続き、生産量を維持することが課題になっていました。ただ酪農農家の戸数自体は減っているので、生産規模拡大のためには一戸当たりの規模を拡大する必要がありました。

でも国から牛乳が足りないから作ってくれって言われたのに、昨年、今年と余っているからいらないといわれたら酪農家自身も困ってしまいますよね。

そもそも何のために規模拡大をするのかという議論が不足しています。国から言われるがままに規模を拡大するだけでなく、酪農家自身も自分たちが経営者の視点を持って、生産に対して主体的に考えていく必要があるんじゃないか、と思っています。

ただ、個別で働いている酪農家はもしかしたら日々の作業で忙しく、活動を振り返る機会がないのかもしれない。どういう暮らしを送っているのか、生産現場の適切な働き方って何だろう、という働く人の観点から酪農の経営的な課題を調査しています。

私たちは消費者の観点からどういうことをすればいいんでしょうか?

現実の酪農の生産現場をもっと知ってもらうことから始められたらいいかなと思います。どういう風に牛乳が生産されているのかを知ることで、そんなに大量に作らなくてもいいよとか、もっと環境に配慮した生産方法にしてほしいという観点が生まれてくるかと思います。そういう消費者の声も、酪農業界の現場が変わるきっかけになるかもしれませんね。

こだわりの牛乳を求めるという視点もあるかもしれませんね。

メーカーもある程度の品質の牛乳が一定量生産されるということを求めているので、酪農の生産段階での原料乳に付加価値をつけるという発想はあまりないと思いますね。

ただ、若い酪農家の中には、自然環境に配慮した酪農や、牛たちの福祉に配慮した酪農をやりたいという意思をもって酪農を始める人も出てきています。今後はそういう酪農家が増えるかもしれないですね。

また、津別町では明治乳業から有機栽培のエサを与えて育てた牛から牛乳を作りたいという依頼があって、熱心な酪農家がその活動に賛同し、実際にオーガニックな牛乳を作ったという事例もありますね。

のびのびと草をはむ牛たち(提供:小林国之さん)
そう思うと私たち消費者も食品の流通システムっていう大きな流れで考えるんではなく、この食材はどう育てられ、どう食卓に届いたのかという、自分たちが把握できる範囲の消費という考え方も大切になりますね。

1日の中で一品だけ顔が見える生産者から食材を食べるという暮らしができたらいいなと思っていて、今そういうキャンペーンを立ち上げたいなと思っているんです。もちろん消費者がそれを知る機会や手に入れられる仕組みも重要ですが、そういう意識を徐々に広げていけたらと思っています。

今回お話いただいた小林さんが語る北海道の食文化とフードロスをテーマにしたサイエンス・カフェがオンラインで開催されます。小林さんの他に、ゲストとして札幌の有名なパンケーキ店「椿サロン」のオーナーである長谷川演さん(株式会社アトリエテンマ 代表取締役)をお招きし、札幌、北海道のおいしいフードロスへの取り組みについて語り合います。ぜひちょっとおいしいデザートを食べる感覚でご視聴ください。

カフェの舞台になる椿サロン赤レンガテラス店

第121回サイエンス・カフェ札幌「たまたまSDGs~畑から食卓までのフードロスを語り合う~」

【概要】
日 時:2021年11月25日 (木) 19:00〜20:00

配 信:オンライン配信

ゲスト:小林国之さん(北海道大学 大学院農学研究院 准教授)

長谷川演さん(株式会社アトリエテンマ 代表取締役)

聞き手:CoSTEP ソーシャルデザイン実習 受講生

参加費:無料

申込方法:事前申し込み不要

詳細は【こちら】

当日、ゲストへの質問もこちらで受け付けています【たまたまSDGs質問箱】

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2021.11.18

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