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#181 鳥の研究者が探るコミュニケーション

(北海道大学事務局で行われた定例記者会見の様子)

2022年7月14日(木)に「鳥の研究から人間を知る」というタイトルの定例記者会見が開催され、北海道大学ディスティングイッシュトリサーチャーを付与された相馬雅代さん(理学研究院 准教授)が研究成果を紹介しました。この称号は令和4年1月に設立され、専門分野において高い研究業績を有する本学の若手教員に対して付与されるものです。今年度は4月1日付で相馬さんを入れた8名の教員に授与されました。

相馬さんは「コミュニケーションはなぜ進化したのか」という大きなテーマを元に、概ね鳥を対象とした研究をしています。「鳥というのは実は人間のコミュニケーションモデルとして科学的に用いられることがあるのです」と語る相馬さん。鳥のコミュニケーションといえば歌をうたうイメージですが、鳥から人間を知ることが出来るのでしょうか。

(鳥の研究成果について終始楽しそうにお話された相馬雅代さん。記者会見直後に事務局前で撮影)
鳥類の50%以上は聴いた音を覚えて発声する能力を持つ

ヒトは聴いた音を記憶し、それを自分で出すことができます。この能力を「発声学習能力」と言いますが、ヒト以外の霊長類はそのような能力がないと考えられています。一方、約1万種いる鳥の6千種ぐらいはこの発声学習能力を持つスズメ目です。なぜ霊長類の中では特殊な発声学習能力をヒトだけが持つのか。生物の多様性の中でさまざまな生物の特徴を考えた場合に、鳥はヒトにとって興味深い比較対象になります。

(発表の表紙を飾った日本では馴染み深いブンチョウ。ブンチョウはスズメ目で発声学習能力を持ちます。)〈写真提供:相馬雅代 写真:Nao Ota〉
歌だけでなく、身振り手振りでコミュニケーション

鳥の求愛方法について、これまでの定説では、鳥のオスが歌をうたい、メスが複雑な歌をうたうオスを好む、といった音声を使った聴覚コミュニケーションが中心だと思われていました。しかし、実際には、音声に加え、雌雄間でより複雑なコミュニケーションが行われていることが分かってきています。オスの動きに合わせてメスがあいづちを打ったり、ダンスをし合ったり…。聴覚コミュニケーションに加えて視覚コミュニケーションが役割を果たしている可能性があることが分かりました1)。

求愛を他者へ見せびらかすカップル

2018年の相馬さんの研究グループによるセイキチョウという鳥の求愛行動の研究では、ふたりきりの時よりも観客として第3者がいる時の方が頻繁に求愛行動であるダンスをすることが分かりました。2羽の関係を周りにアピールすることで、誠実さを確かめ、絆を深めるといった機能を果たしていると考えられます。1対1のコミュニケーションが想定されがちだった鳥の求愛は、さらに複雑な要素が絡み合っていると考えられます2)。

(観客(手前)の前で求愛するセイキチョウカップル(奥)。)
特定の模様に惹かれる鳥

さらに、相馬さんの研究グループの最近の研究成果として、コモンチョウという鳥を使った模様の実験が紹介されました。コモンチョウは細かい水玉模様を持つ鳥ですが、なぜそのような体表を持つようになったのかは分かっていませんでした。そこで、研究グループは黒地に白い水玉またはストライプが印刷された紙を用意し、2種類の紙にコモンチョウがどう反応するか調べたところ、ストライプに比べて水玉模様の方により惹きつけられていることが分かりました。鳥が特定の視覚刺激に対し「好み」があることは分かる貴重な結果となりました3)。

鳥のコミュニケーションとヒトの音楽

以上、鳥は音声を通して意味を伝えるだけではなく、視覚や親和性に寄与する複雑なコミュニケーションを行なっていることが分かりました。これまで鳥のコミュニケーションはヒトが言語を獲得するモデルとされてきましたが、相馬さんは「言葉よりはヒトの音楽に近いのではないか」と考えているそうです。今後は、鳥がリズムをきざむ行動がどのように交わされたり同調されているのか、個体感の「きずな」に着目して研究されるそうです。

さらなる研究で鳥と私たち人間のコミュニケーションの進化について理解が深まりそうです。

相馬さん、ありがとうございました!

【大内田 美沙紀・CoSTEP特任助教】

注・参考文献:

  1. 北海道大学 2015: プレスリリース「タップダンスする小鳥: セイキチョウの超高速度で足を踏みならす求愛行動」(2015年11月20日)。論文はOta, N., Gahr, M. & Soma, M. 2015: “Tap dancing birds: the multimodal mutual courtship display of males and females in a socially monogamous songbird”, Scientific Reports 5, 16614.
  2. 北海道大学 2018: プレスリリース「求愛ダンスを見せびらかす小鳥のカップルたち」(2018年10月4日)。論文はOta, N., Gahr, M. & Soma, M. 2018: “Couples showing off: audience promotes both male and female multimodal courtship display in a songbird”, Science Advances 4, 10.
  3. 北海道大学 2022: プレスリリース「水玉柄の鳥は水玉模様が好き~コモンチョウの特性理解で,動物にみられるさまざまな模様の進化解明に新展開~」(2022年3月25日)。論文はMizuno A. & Soma, M. 2022: “Star finches Neochmia ruficauda have a visual preference for white dot patterns: a possible case of trypophilia”, Animal Cognition.

相馬さんを紹介しているこちらの記事もご覧ください

  • 【フレッシュアイズ】#6 鳥のラブソンングを読み解く 相馬雅代さん(2013年8月5日)

 

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2022.07.22

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