来週末の2月24日(金)18時より、第128回サイエンス・カフェ札幌が札幌市図書・情報館にて開催されます。テーマは想像力です。アーティストの平川紀道さんと科学哲学者のローマン・フリッグさんを招いて、アートと科学それぞれの視点から想像力のあり方に迫るサイエンスカフェとなっています。
平川さんがディレクションなどで関わった作品「吹雪とレーザーによる風の可視化」を拝見しました(下写真)。自然としての吹雪と、レーザーという技術が融合したとても幻想的な映像でした。
この作品には、昔のフィルムでの映画の撮影・上映と似ているところがあります。フィルム映画はカメラのレンズを通して光を当てることによって映像をフィルムに定着させます。そして、再びフィルムに光を当てることによって、映像がレンズを通してスクリーンに投影される。
「吹雪とレーザーによる風の可視化」では、吹雪にレーザーを照射して映像を撮影しました。そして、スクリーンにプロジェクターで映像を投影する際にも、そこにレーザー光線をさらに重ねて当てることによって、映像の輪郭を強調するようにしています。つまり、レーザーを当てて撮影した映像に再びレーザーを当てることによってこの作品は上映されている。この撮影と上映の方法自体が特徴的な作品で、ここにはフィルム映画と同じような構造があります。
このような記録と再生、入力と出力の面白さは映像のデジタル化などの影響で見えにくくなっているのですが、この構造を頭の片隅に置くと、この作品の見え方も違ってくると思います。
このようなデジタル技術に依拠した作品が平川さんには数多くありますが、サイエンスカフェではどのようなお話しを聞かせてくれるのでしょうか。
ひとは何かを想像する時に、自分がかつて見てきたこと、つまり記憶と結びつけて物事を想像するはずです。では、人間は本当に自分の見たことのないものをつくり出せるのか? 私はこのような疑問に突き動かされて作品を創り続けてきました。
仮にそのような制約を乗り越えて、見たことのないものを想像できるとしたら、自分とは断絶した他者、もはや人間ではないような何かに触れなければならないのではないでしょうか。実は計算機やプログラミングを使って私が作品をつくっている理由もここにあります。計算機はいわば一つの他者であり、その計算機の超人間的な計算速度や精度、あるいは予期せぬ振る舞いなどに依拠することによって、自分が見たことのないものをつくり出そうとしているんです。
この意味では、私は、おそらく一般的にアートと聞いて思い浮かべるようなものとはかなり違ったしかたで想像力をとらえていると思います。まずはそのことを共有してみたいと思っています。
サイエンスカフェでは、科学哲学者のフリッグさんとも対談しますが、どのようなお話しを期待していますか。
今の話しともつながるのですが、自分がやっていることが芸術のど真ん中をいっているわけではないという意識が自分にはあります。なので、「果たして自分はふだん何をしていることになるんだろう…?」と自分自身でわからなくなることがあるんです。もしかしたら、そのヒントが今回のサイエンスカフェで得られるのでは、という期待もあります。
最後に、サイエンスカフェを観覧される皆さんへメッセージをお願いします。
自分はアーティストなので、やはり実物の作品を見てもらうのが一番ですし、自分自身、今回のサイエンスカフェで何が得られるのか確信があるわけではないのですが、何か今後の活動のヒントとなるようなものを持ち帰ることができればと思っています。もし、見ていただいたお客さんも、何かを持ち帰ることができたなら、僕も嬉しいです。質疑の時間もあるようなので、その際には、気軽にお話ししましょう。
第128回サイエンス・カフェ札幌
「アートと科学哲学からの、想像力をめぐる対話」
- 日 時:2023年2月24日(金) 18:00~20:00
- 会 場:札幌市図書・情報館 ※詳細はコチラ
- 話し手:
Roman Frigg(ローマン・フリッグ)/London School of Economics
平川 紀道(ひらかわ・のりみち)/アーティスト
松王 政浩(まつおう・まさひろ)/北海道大学 理学研究院 教授 - 聞き手:朴 炫貞(ぱく・ひょんじょん)/北海道大学 CoSTEP 特任講師
- 参 加:無料、申し込み不要
- 主 催:
北海道大学CoSTEP
札幌市図書・情報館 - 協力:札幌国際芸術祭実行委員会/札幌市
*科研費基盤研究(B)20H01736「統計学的視点を加味した科学哲学による「科学的推論」教育プログラムの構築」(研究代表者:松王政浩)