下水を「水に流しておしまい」なものではなく、貴重な資源に変えた調査手法。それが下水サーベイランスです。下水サーベイランスとは、下水に含まれる微量の物質を検知することで、市中の感染状況を知るための手段であり、新型コロナの流行以降、急速に発展しています。
その研究を牽引している一人が北島正章さん(工学研究院 准教授)です。北島さんは世界に先駆けて2020年4月、下水サーベイランスが新型コロナの流行把握に重要であることを訴える論文を、共同研究者とともに発表しました1)。そして現在も下水に含まれる新型コロナウイルスのRNAを検出する研究を進めており2)、感染状況を示すデータは毎週札幌市のウェブサイトに掲載されています3)。国の対策の法的位置づけが今年の5月から変わり、陽性者数の把握が困難になってきたこともあり、下水サーベイランスはさらに重要視されるようになっています。
その現状と課題、そして可能性について、研究者や自治体担当者が一堂に会して報告する公開講演会「社会における下水サーベイランス」が、8月2日(水)13時から北大札幌キャンパスで開催されます。北島さんが司会をつとめ、札幌市だけではなく、他の自治体における事例紹介もあります。新型コロナ関連のニュースを見聞きすることは若干少なくなりましたが、今も対策の最前線にいる人々はいます。感染対策の基本は知ることから。ぜひお越しください。
社会における下水サーベイランスの活用にむけて
日時: 2023年8月2日(水)13:00~16:40
場所: 北海道大学工学部フロンティア応用科学研究棟2 階レクチャーホール
主催: 一般社団法人日本下水サーベイランス協会
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引用文献:
- Kitajima, M. et al. 2020: “SARS-CoV-2 in wastewater: State of the knowledge and research needs”, Science of the Total Environment, 739.(日本語プレスリリースはこちら)
- Kagami, K. et al. 2023: “Association of wastewater SARS-CoV-2 load with confirmed COVID-19 cases at a university hospital in Sapporo, Japan during the period from February 2021 to February 2023”, Science of the Total Environment.(日本語プレスリリースはこちら)
- 札幌市: 「下水サーベイランス」(2023年7月28日閲覧)