2003年3月に薬学研究科修士課程を卒業し、同年、大塚製薬に入社された伊藤 慎さんは、現在、医薬営業本部プロダクトマネージメントグループのニュープロ担当プロダクトマネージメントマネージャー(PMM)として勤務されています。「将来を見据えた大学での過ごし方」と題して、伊藤さんが医薬品業界での仕事から身につけられたグローバルな視野、そしてリーダーシップについて語られた講義の一部を紹介します。
三浦ちはや(CoSTEP11期 本科受講生/農学院修士課程修了)
グローバル化
伊藤さんが働く医薬品の市場は、世界にまたがっています。日本で使用されている医薬品のうち、日本で開発されたものの割合は16%程度であり、世界の市場における日本の製薬会社による新薬開発や先行販売はあまり多くありません。逆にみると、これはグローバルに活躍できるチャンスがあると言えます。
今日、製薬産業を含め、どんな産業でも日本だけで成り立っている会社はほとんどありません。グローバルを意識するより、むしろボーダーレスといっていいでしょう。世界との関わりが出てくる上で、英語は必要となる最低限のコミュニケーションのツールです。英語が話せることではなく、話す中身が重要です。ただそのために必要なことは事前に頭(机上)で考えてもわかりません。いろいろな経験をしておくことが重要です。社会で活躍しようとするならば、どうしてもグローバルな目線が必要になってきます。
将来を具体的に考えること
皆さんは将来どのような仕事をしたいですか? 私自身は、年齢と共に研究者志望から薬剤師、企業で働く、というようにやりたいことやなりたいものが変化してきました。また、受験や進学、就職活動等の機会を通して、仕事についてその都度考えるものの、自分の将来像については非常に漠然としていました。今思うと、もう少しふだんから具体的に考えておけばよかったと思います。
このような問いに結論がすぐに出るわけではありませんが、考えることが大切です。そして、ただ考えるだけでなく、「なぜその仕事なのか」「他の仕事ではだめなのか」と問いかけ、具体的に調べたり、実際にその仕事について知っている人に聞いてみたりすることです。他大学やOB・OGとの交流が多い関東・関西の大学と比べ、職業に関する情報が集まりづらい北大の学生は、自ら情報を集める必要があります。
私が本務以外に社内で取り組んでいることの1つに、若手社員とのグループミーティングがあります。この中で若手社員の傾向として、「自分で考えない」、「チャンスに飛び込まない」と感じることがあります。会社や顧客が求めることに自分が応えられているのか、自分がなりたいもの・したいこととのバランスをとりながら、将来を考えることが大切です。
リーダーシップとマネジメント
リーダーシップとマネジメントの定義はさまざまです。私が考えるリーダーシップとは、会社の発展のための方向性を示したりチャレンジしたりすることで、マネジメントはリーダーが決めた方向性に従って適切に仕事を行うことです。リーダーは事業の牽引や決定に責任を持ち、マネージャーは自らの職責にあった実行に責任を持ちます。つまりリーダーは、「なぜ?」を追及することで物事の本質を捉え、対応する「Why思考」を、マネージャーはいかに効果的に仕事を行うかを考える「How思考」を持つことが大切です。
北大生へのメッセージ:なぜ、「思い」が重要か
思考と行動はつながっています。習慣、行動を変えることで思考が変わることがあります。一方で、思考を変え、ミッションをもつことで、行動が変わることもあります。ですから自分の将来について真剣に考え、それを行動に移してみましょう。また、自分と全く違う考え方に触れてみてください。大学時代は自由な時間がたくさんあり、どんな失敗もできます。色々な挑戦を楽しんでみてください。
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この講義を聞いて、私自身ももっと将来について真剣に考えておくべきだったこと、これからも考え成長し続けなければいけないことを痛感いたしました。また、イノベーションは多様性から生まれるということから、まだまだいろいろなことにチャレンジし続けたいとも思いました。最後に、伊藤さんはどのように気分転換をしているのかを尋ねてみました。伊藤さんの趣味はイベントに出かけたり、映画を観たりすることで、何かに集中する時間を作ることで頭がスッキリするとのことでした。私もぜひ、実践してみたいと思います。
伊藤さん、ありがとうございました。
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伊藤 慎さんが講義したのは、全学教育科目「大学と社会」です。