私たちは今、超高齢社会をどう生きるか、という問いに直面せざるを得ない状況にあります。
この問いをテーマとした公開シンポジウム「安心してケアする・ケアされる社会とは―私たちだれもが体験する老いと介護を考える」が1月11日に開催されました(主催:文学研究科応用倫理研究教育センター)。シンポジウムでは、上野千鶴子さん(立命館大学 特別招聘教授・東京大学 名誉教授)が基調講演をしました。
(定員300名の会場は満員)
結婚していても、していなくても、高齢になるとパートナーや子どもと死別・離別することで、一人で暮らす「おひとりさま」になる割合はかなり大きくなります。上野さんは孤独死でも、施設での死でもない、住み慣れた場所で人々との関わりの中で迎える「在宅ひとり死」という考え方を提唱しています。
講演では多くの介護・医療の実例から、在宅ひとり死を可能にするための条件について話がありました。
(基調講演で「在宅ひとり死は可能か?」と題してお話する上野さん)
続いて、笹谷春美さん(北海道教育大学名誉教授・北海道立女性プラザ館長)が北海道の高齢者ケアの特徴について、松本勝明さん(前 北海道大学公共政策大学院教授・公共政策学研究センター長)が海外の介護保険制度との比較について話をしました。
(上野さんの問題提起で盛り上がるパネルディスカッション)
シンポジウム後にお話を伺いました。社会の課題に対して研究者はどうあるべきでしょうか
研究者には、様々な方々の実践を記録し、比較することで理論化するという非常に重要な役割があります。しかし、これは簡単なことではありません。フィールドでは「おまえは何をしにきた」という扱いを受けるのが当然だからです。
そのため、研究より現場が先にある、と考えることが第一です。まとめた成果は公開する前に、まずその現場の方々にフィードバックしなくてはなりません。それに、社会では大学での言葉は通じません。研究者は大学と社会のバイリンガルにならなければいけないのです。
学術研究におけるジェンダー研究の役割は
理工系の研究者の方々にはまだジェンダー研究というものが十分に理解されていないように思います。しかし、大学はジェンダー研究を進めるよりも、まずは大学教員の女性比率を高めるのが先でしょう。学生や院生の男女比に比べると、明らかに女性教員が少ないのが日本の大学の現状です。
5月31日に日本学術会議で「男女共同参画は学問を変えるか」というタイトルでシンポジウムを開催します。そこでは人文学、社会科学、生命科学、人工物科学の4分野の研究者が議論をする予定です。どういった議論ができるか、期待しています。