大学ってどんなところ? 北海道登別明日中等教育学校4回生(高校1年)の皆さんが、北大に一日インターンシップにやって来ました。前編の今回は日下葵さん、田中望羽さん、大矢佑基さん(理学院修士1年)の3名が総合博物館を案内しながら、北大と研究の世界についてお話しします。高校生は一体何を感じるのでしょうか。
石ころからわかるぼくたちの星 / 2階 感じる展示室
【菊池一生・登別明日中等教育学校4回生】
今回僕は日下葵さん(理学院修士1年)の研究を聞かせていただきました。日下さんは地中にある小さな「石ころ」に目をつけて、研究を行っています。実際に博物館に展示している石を手で触らせてくれながら、説明をしてくださりました。
石の中でも日下さんは深成岩に関する研究をしています。深成岩は、マグマが深いところで固まったもので、通常は火山の地下深くにあります。8月の誕生石である緑色のペリドットは、深成岩のカンラン岩をつくるカンラン石です。日下さんは中東にあるオマーンに、実際に自分の足で訪れ、そこで研究を行ったそうです。実際にその時の写真を見せていただくこともできました。テントを立て砂漠で仲間たちとキャンプをしている様子や、「枕状溶岩」という水中でマグマが噴火したものの跡を見せていただきました。自らの研究をより深めたいという強い意志で海外に赴いたということを聞いて、研究に誇りを持っていてとても好きなのだなと感じました。
(石を実際に手に取りながら日下さんの解説を聞いています)
説明の最後に日下さんは、昔の石の温度、圧力、化学組織などの様々な要因を多様な面から調べていくことによって、今の地球の内部を知ることできるとおっしゃっていました。それを聞き、研究とは新しい自分の考えや意見を持つことのできる素晴らしいものだと思いました。そして、研究内容を笑顔で説明してくれる日下さんを見て、研究とはこんなに楽しいものなのだと思いました。
今回の大学院生のお話は、研究についての知識を得るだけではなく、自分の将来を改めて考えるきっかけになったと思います。この経験を今後の人生や進路決定の一つとして活かしていきたいと思います。
化石からわかる進化の分岐点 / 3階 古生物標本の世界
【久慈純平・登別明日中等教育学校4回生】
今回、僕は田中望羽さん(理学院修士1年)から化石の研究についてのお話を聞きました。田中さんが今研究していることは「恐竜がどのように進化したかを調べる」ということです。恐竜は、進化上、爬虫類と鳥類の間に位置づけられます。生物進化の中の恐竜の位置付けをより詳しく見るために今生きているワニ、カメと鳥類との比較を行っているそうです。
(研究の説明をしている田中さんとそれを興味津々に聞いている菊池一生君と僕)
田中さんは、化石を採掘するためにモンゴルに行ったときのことを話してくれました。採掘中は、化石を傷つけないように、たこ焼きを焼くときに使うかえし棒で化石の周りを少しずつ慎重に掘ったそうです。また、実際に研究のために持って帰ることのできる化石は、調査地域にあるもののほんの一部であると言っていました。このような田中さんの化石発掘にまつわる話を聞き、自分自身で化石を発掘するためにモンゴルまで出向く田中さんの行動力と、ご自身の研究に対する熱い想いを感じました。
説明のあとに化石を掘る時に岩を砕くハンマーを触らせてもらいました。思っていたよりも軽く、実際に岩を砕く時に使いやすそうでした。田中さんの研究についてのお話を聞いて、自分たちの身近にない恐竜を調べることで、今いる生物の成り立ちを知るために必要な新しい発見が得られるのではないかと思いました。だから、この研究は、今まだわかっていない進化の謎を解き明かして行くのに必要だと感じました。
たくさんの標本 / 3階 生物標本の世界
【石川輝・登別明日中等教育学校4回生】
大矢さんの説明を聞いて初めて分類学という学問を知りました。物に名前があるように生物にも名前があります。生物に名前をつけて整理することを分類学というそうです。特に、この分類学においてたいせつなことは標本にすることなんだそうです。大矢さんは標本は証拠であり材料でもあるとおっしゃっていました。なぜなら標本は、そのものが存在している証拠になり、見つけた生き物を新種だと証明する材料にもなるからですからです。
(ヒラムシの標本を手に取りながら解説する大矢さん)
大矢さんはヒラムシを研究しているそうですが、僕は初めて聞きました。大矢さんは自分で見つけたヒラムシを新種だと証明するために、いままでに発見されたすべてのヒラムシと比較するそうです。具体的には、いままでに発見されているヒラムシと新しく発見されたヒラムシの断面図を比較してどこの器官がどう違うのかなどを熱心に語っていただきました。僕は、新種と聞くと探すのが難しそうなイメージを持っていましたが、大矢さん曰く、新種はまだまだ身の回りにたくさんいて、比較的簡単にみつかるそうですが、それを新種と証明するのが大変だそうです。
また、現在世界に一つしかない標本「ホロタイプ」についても大矢さんに熱く語って頂きました。「これは世界で一つしかない標本だから絶対になくしてはいけないものなんだ!」と。特に大切な資料は光などに当ててしまうと色が落ちてしまって価値が下がってしまうため、通常は標本庫に保管しているそうですが、この部屋では特別に少し暗い部屋に展示しているそうです。現在も資料館は貴重な資料や標本が保管されており研究において利用されています。新種も昔の標本から見つかることもあるそうです。
なかなか一時間では博物館を知りつくせませんでした。それぐらいたくさんの情報に溢れていたので機会があればまた見に来たいと思いました。
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後編では農学研究と医学研究について、3名の大学院生が高校生にお話しをしました。後日掲載いたしますのでお楽しみに。
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この記事は、北海道登別明日中等教育学校のインターンシップにCoSTEPが協力し、大学院共通授業科目「大学院生のためのアウトリーチ法」としてて実施した成果の一部です。
【取材・執筆:菊池一生、石川輝、久慈純平・登別明日中等教育学校4回生+CoSTEP】
日下さんの所属研究室はこちら
理学院 自然史科学専攻
地球惑星システム科学講座
ジオテクトニスクグループ(Marie Python 助教)
田中さんの所属研究室はこちら
理学院 自然史科学専攻
地球惑星システム科学講座
進化古生物学研究グループ(小林快次 准教授)
大矢さんの所属研究室はこちら
理学院 自然史科学専攻
多様性生物学講座I(柁原宏 准教授)