登別明日中等教育学校4回生の2人が、ソングバード研究に取り組む森千紘さんの研究室におじゃましました。
ソングバードとは?
ソングバードとはさえずる鳥のことです。親のさえずりを聞き、それを自分で練習することで同じようにさえずることができるようになります。このことを「感覚運動学習」といいます。人間やコウモリ、クジラなどもこの感覚運動学習をすることで、言語や運動などの能力を習得します。
森さんが所属する研究室ではキンカチョウというソングバードの一種を使い、さえずりの習得過程を観察しています。キンカチョウは手のひらにすっぽりと収まるほどの小型の鳥で、ペットとして家庭で飼われることもあります。雄のキンカチョウの首元には黒い縞模様があるため、ゼブラフィンチとも呼ばれています。
(オレンジ色のくちばしをもつのが雄のキンカチョウ。胸元の縞が特徴。その他の3羽は雛)
森さんは耳が全く聞こえないキンカチョウがどのようにさえずりを覚えるかを研究しています。見本となる親鳥のさえずりや自分の声を聞けないことが、さえずりの習得にどのような影響を与えているか、様々な実験で調べています。
キンカチョウの飼育と観察
研究室では、およそ300羽のキンカチョウを飼育し、繁殖させています。部屋は壁一面に鳥かごが並べられており、雌雄のカップルで飼育しているものも多くいました。
鳥に名前をつけるということはありませんが、どの親から生まれた鳥だということがわかるように記録しています。飼育は担当者が責任を持って行いますが、小さなキンカチョウには毎日餌や水をあげるなどの必要があるそうです。
さえずりの録音は、専用の部屋で行います。お手製の箱にマイクを取り付け、24時間さえずりを録音しています。箱の中には、お手本となる鳥のさえずりを流すスピーカーや、1羽のみの実験の時に寂しくならないように鏡も設置して、他にも鳥がいるかのように思わせたりするなどの工夫がされていました。
森さんの研究成果
通常、キンカチョウは親のさえずりを聞くことで、生後3ヶ月程度で親鳥のさえずりをほぼ正確にまねすることができるようになります。一方、耳が全く聞こえないキンカチョウは、見本となるさえずりを聞くことはできません。しかし森さんは、耳が全く聞こえないキンカチョウも1年ほどかけると、完全ではないにしろ、さえずりができるようなることを発見しました。
研究への想い
森さんは「研究室の仲間とミーティングをしながら、次の実験について考える時はとても楽しい」と笑いながら語ります。しかし実験は楽しいことだけではなく、思うような成果を得ることができないこともあります。また、脳が活動している部位を調べるため、キンカチョウの脳の標本を作る必要もありますが、初めてこの作業をしたときはショックを受けたそうです。「研究の現場では、鳥が好きだという気持ちだけでは研究を続けることはできません。なぜそうなるのか知りたい、という探求心や知識欲が必要です」
現在博士課程3年生の森さんは、今後も研究者として、北大だけでなく海外に飛んででもこの研究を続けていきたい、とキンカチョウ研究への想いを語ってくれました。
(最後に三人で記念撮影。手の中にいるのはソングバードの模型)
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この記事は、北海道登別明日中等教育学校のインターンシップにCoSTEPが協力して実施した成果の一部です。
【取材:村井元瞭、山口宙大(登別明日中等教育学校4回生)+CoSTEP】