音楽心理学を研究している安達真由美先生(文学研究院 教授)の好きな大島弓子さん作の二冊の漫画「綿の国星」、「バナナブレッドのプディング」と日本でも有名な映画「Pretty Woman」、「Dead Poets Society」を通して、先生の人物像に迫りました。
【佐々木虎徹・総合理系1年/斎藤龍馬・総合理系1年/雜喉咲紀・総合理系1年】
「綿の国星」と「バナナブレッドのプディング」が好きな理由は何ですか?
「綿の国星」は擬人化した猫が主人公で、読んでいて一番ほんわかして、心が和むので好きですね。「バナナブレッドのプディング」も心が和むというのは同じなんですけど、この作品は、主人公の女の子が変わっていて、周りになじめないんです。でも知り合った男子大学生が、唯一彼女のことを理解してくれるんですね。そんな周りになじめない主人公が、当時の私自身とダブるところがあって、共感できるんです。この二つは今でも残している大事なものですね。
(大島弓子さんの「綿の国星」と「バナナブレッドのプディング」)
「Dead Poets Society」と「Pretty Woman」という二つの映画。30回以上見られたそうですね。なぜそんなに好きなのですか?
「Dead Poets Society」は革新的な考えを持った先生が生徒たちに自分でものが考えられるようになってほしいと伝統を打ち破っていく。結果的にその先生は学校から追い出されてしまうけれど、生徒には先生の気持ちがしっかり伝わっていたという話。大人や慣習に縛られて自由にできない若者たちとそれを理解してくれる大人というところにすごく心が惹かれたんですよね。「Pretty Woman」は元々真面目で頭のいい少女が、才能を生かすことができず学校を中退。それでも彼女の本質を見抜いてくれる人と出会って、どんどんいいところが引き出されていくという話。どちらも日本の社会とうまくやっていけない自分と重なるところがあって、すごく共感したんですよね。
(映画「Pretty Woman」と「Dead Poets Society」)
若いときの成長のきっかけは何ですか?
中学生の時とか、大人とあまりうまくいってなかったし、高校、大学時代は日本の平均社会で均質化されていくことに合わせようとしていました。大学を卒業するころは「出る杭は打たれる」日本の社会で打たれに打たれてちょっと耐えられないくらい。社会に出て、音楽講師をやっていた時も自分が浮いているのが分かったし。そんなしがらみから解放されること「も」求めてアメリカに行きました。アメリカの文化は「キーキーいう車輪は油をさしてもらえる」というものなんです。私の場合はアメリカで杭をどんどん外してもらったという感じなんです。それで大人になってから身長も5㎝伸びましたし、ようやく自分の本質をアメリカという文化が見出してくれて、自己認識できました。
日本へ帰ってきた経緯について教えてください。
たまたま日本で学会があったんですよね。日本の学会で発表したことはなかったんですが、日本の大学で教えたかったので、参加しました。そのときに、ちょうど山梨大学で教員の公募をしていると聞いて応募したんです。それで、応募したら連絡が来て、面接して採用が決まりました。
研究者になったきっかけについて教えていただけますか。
教わったピアノの先生に憧れてまず先生になろうと思ったんです。でもいい音楽の先生になるために、教育心理学とか発達心理学の理論を勉強してたら、そっちに興味が湧き、研究者の道に進むことにしました。
子どもを研究対象とした理由はどのようなものなのでしょうか。
子どもの考え方がすごくおもしろいと思ったんです。幼少期を考えてみると、子どもは自ら学習することに興味を見出すのですが、そのことに周りの大人が興味を示さないと、そこで終わってしまいます。子どもが自発的に成長できる力をうまく使える大人が増えるといいなと思いましたし、自分もそうなりたいと考えて、それで子どもの研究に興味を持ちました。
安達先生のお話から
お気に入りの本や映画には安達先生ご自身の境遇と似た主人公が登場したり、生き方が重なるところがあったりして、安達先生という人物を表すのに重要なキーアイテムであるといった印象を受けました。研究の発想もご自身の経験から来ているものが少なくなく、全体を通して、一研究者としてだけでなく一人の人間としての安達先生の一面にふれることができたのではないかと感じました。平均化されることから解放されたかったという安達先生のお話がとても心に残りました。
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この記事は、佐々木虎徹さん(総合理系1年)、斎藤龍馬さん(総合理系1年)、雜喉咲紀さん(総合理系1年)が、全学教育科目「北海道大学の“今”を知る」の履修を通して制作した成果物です。