北海道に緊急事態宣言が発令された5月16日から1週間たちました。厳しい状況は変わらず、金曜は過去最多となる727名、昨日も658名の陽性者が北海道全体で出ました。いずれも約6割が札幌市での数です。単純に計算すると北海道にしめる札幌市の人口は約4割ですので、札幌市の多さが理解できます。札幌市危機管理対策室で感染症対策参与として対応にあたっている岸田直樹さん(総合診療医・感染症医/感染症コンサルタント)は「自分がコロナだと思って行動してください」と言います。岸田さんに伺い、現在の状況をまとめました。
札幌市では今、全域および全年齢に感染が広がっています。4月中旬は人口が多い東区や北区、人の移動が多い中央区が中心でしたが、5月上旬には徐々に他区に広がりはじめ、現在では全域に及んでいます。また、年齢別にみても10代や20代、職業別では学生の感染者も増えて、感染経路も家庭内や個人活動の割合が増えています1,2)。
この状況の背景には、うつりやすく重症化しやすい英国型変異株3)の流行があります。その割合は陽性者中96.7%(5/3~9検査分)となり、ほぼ従来の株と置き換わっています。変異株は若い人でも重症化しやすいといわれています。これまでは、若い人の感染の問題として「感染しても重症化しないが、その人によって感染が拡大する」という点がしばしば指摘されてきました。しかし現在は、若い人当人の重症化リスクも高まっているのです。
病床は既に限界を迎えています。自らの健康と命はもちろん、身の回りの方々、そして会ったこともない誰かのため、そして医療従事者の方々の負担を下げるために、より一層の対策をとる必要があります。外出を可能な限り控え、外出する際もマスク着用・密閉空間をさける・大声を出すことや大勢での飲食をさける、といった基本対策を徹底してください。
医療環境が整っていない北海道の他地域へのこれ以上の感染拡大を抑えるためにも、札幌市の一人一人が努力する必要があります。
【川本思心・CoSTEP/理学研究院 准教授】
参考文献:
1) 岸田直樹 2021: 「札幌市の感染状況・医療提供体制の週間分析 概況(2021年5月12日分)」(2021年5月22日 閲覧).
2) 岸田直樹 2021: 「札幌市の感染状況・医療提供体制の週間分析 概況(2021年5月19日分)」(2021年5月23日 閲覧)
3)国立感染症研究所 2021: 「日本国内で報告された新規変異株症例の疫学的分析(第1報)2021年4月5日時点」(2021年5月22日 閲覧).
4) 札幌市 2021: 「年齢別感染者数の割合:新型コロナウイルス感染症の市内発生状況(統計情報)」(2021年5月22日 閲覧).