2007年春に理学研究科を修了し、現在はAGC化学品カンパニー 技術統括本部開発部に勤める橋本真維さんが「Always Positive!!!〜いつでも楽しく、前向きに〜」と題して、学部1年生対象の講義をつとめてくれました。橋本さんの授業の一部を紹介します。
バイトがサークル活動!?
はじめに、みなさんにとっても身近な話題からはじめたいと思います。学部生・院生を通じて、勉強以外で取り組んだアルバイトのお話です。私は駿台予備校でティーチングアシスタントの仕事を6年間続けました。内容は、中学生の進路指導や模試監督です。バイトですから、もちろん時給制です。仕事内容・出来に関わらず、時間給をいただくのですが、「どうしたら正確に素早く作業が出来るか」常に効率性を意識しながら仕事をしていました。その心がけを評価していただいたと思うのですが、次第に正社員でもないのに,他のバイト生を指導する立場の仕事を任せてもらうようになりました。だから、学生時代のバイトは私にとって忘れられない思い出です。
2004年4月(理学部4年生)に研究室に配属され、翌年修士課程に進学
ゼミで与えられたテーマは「フッ素化合物の合成と分析」でした。朝から晩まで実験が続き、3日間泊まりがけで分析をすることもありました。当時は、これだけ仕事のように実験をしているのだから、早く就職して、お給料をもらいながら実験(仕事)ができたらいいのに…と考えることもあったほどです。しかし、社会人になって、そう単純ではないことに気づきました。大学ではトライエンドエラーをくり返しながら、締めきりをさほど気にすることなく実験できたのですが、企業で優先されるのは納期です。お給料をもらうかわりに、納期までに最大限の成果を出すという責任が生まれることを学びました。
大学で取り組んだ「フッ素化合物」の研究がきっかけで、旭硝子への就職
配属されたのはテクニカルサービス部門です。作業指示を出し、その結果を報告書にまとめて提出するのが私の仕事でした。直接実験をすることはできませんが、代わりに私より年上の経験豊富な技術職員に作業指示を出さなければいけません。24歳の入社したての私にとっては、プレッシャーのかかる業務で、コミュニケーションの方法についても悩みました。時間はかかりましたが、3つの心がけによって、この壁を乗り越えられたと考えています。
1. (仕事以外の)雑談を通して自分の人となりを知ってもらい、年齢差を超えて打ち解ける。
2. 専門的知識と論理的な説明で、自分の役割を認めてもらう。
3. 実験器具の購入など、技術職員の要望には素早く応える。
次第に、技術職員のみなさんと信頼関係を築くことができ、この体験が私自身の「自信」にもつながりました。さらにこの経験は、営業の場面でも生かされました。お客さまに、よりよいソルーションを提供するためには、(お客さま自身も気づいていないかもしれない)真の要望を引きだすことが重要です。会社の名前を背負ったお付き合いではなくて、個人としての信頼関係が試されます。そのために、仕事以外の話題なども交えながら、お客さまとの誠意のあるコミュニケーションを重ねるよう努力しました。3年ほどかかりましたが、今では上司に同席してもらうことなく、一人で営業したり、技術的な話をしたりしています。
後輩のみなさんへのメッセージ
学生の頃に興味をもったことに、とことん打ち込んでみることをお薦めします。打ち込むことは自信につながると思うからです。社会人になると、大きな壁にぶつかることが何度かあります。その壁を越えようとするときに、学生時代の経験が試されるでしょう。私はストレートで進学・就職し、これまで留年のような寄り道を経験してきませんでした。そのことを今、少し後悔しています。会社の同期の仲間たちは、寄り道をしながら豊かな経験を積んできているように感じるからです。長い人生の中で、寄り道はマイナスではなく、むしろ人生を豊かにする糧だと思います。そして、もし学生時代に戻ることができたとしたら、バイトだけではなく「よさこいサークル」に入って、とことん打ち込んでみたいです(笑)。
また、だれでもコミュニケーションに悩むことがあると思います。友人同士のトラブルだってあるでしょう。でもそのトラブルを解決するための努力を惜しまないでほしいと希望します。コミュニケーションは複雑ですが、この社会で生きていく上で避けることのできないテーマだからです。
最後に。何事もポジティブに前向きに受け入れる心を育ててください。
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橋本さんが講義したのは、全学教育科目の「大学と社会」です。次回の講師は水産学部出身の芝田宗久さん(MCフードスペシャリティーズ株式会社)です。お楽しみに。