【柴垣光希│2025年度CoSTEP受講生】
メインストリートを歩いていると農学部の近くに白壁と青緑の屋根が特徴的な建物が見えてきます。ここは北大札幌キャンパスに現存する最古の建物「旧昆虫学及養蚕学教室」です。
この建物は現在、「北海道ワイン教育研究センター」として新たに生まれ変わっています1。

「北海道ワイン教育研究センター」は、北海道のワイン産業を持続的に発展させるための教育および研究を目的として設置されており、一部が「北大ワインテイスティング・ラボ」として一般公開されています1。
ここでは、ワインのテイスティングを楽しむことができます。

本記事では、この魅力的なスポットで味わうことのできる北海道産ワインの奥深さをレポートします。
「北大ワインテイスティング・ラボ」の楽しみ方
「北大ワインテイスティング・ラボ」では、合計12種類のワインを飲み比べる有料試飲ができます。

12種類のラインナップは、主に北海道内のワイナリーで生産されたワインの中から、特定のワイナリーやブドウ品種に偏らないよう、多様性を重視して構成されています。
そのため、辛口のものから甘口でフルーティなタイプのものまで、さまざまな味わいのワインを楽しむことができます。


さらに、ここ「北大ワインテイスティング・ラボ」では、ソムリエやワインエキスパートの資格を持つスタッフから専門的な説明を受けながら、北海道のワインを深く知ることもできます。
また、お酒を飲まない方でも、展示コーナーにて「旧昆虫学及養蚕学教室」自体の紹介や北海道産ワインのこれまでの歩みなどを知ることができ、さまざまな歴史を楽しむことができます。

「北大ワインテイスティング・ラボ」はNPO法人ワインクラスター北海道が受託運営を行っています3。代表理事であり、シニアソムリエの阿部眞久さんからお話を伺いました。

2024年9月にオープンした「北大ワインテイスティング・ラボ」は、徐々に北大の観光名所として認知されつつあり、多くの観光客が訪れるといいます。日本人観光客はもちろん、外国人観光客も多く訪れるため、海外からのお客さんとの人間味のあるコミュニケーションにも挑戦されているそうです。
続いて、北海道のワインの特徴を伺いました。
北海道産ワインの特徴は、「寒冷地が生むフレッシュな味わい」
北海道産ワインの特徴はどういったところにあるのでしょうか?
「寒い地域で作られるワインなので、香りや酸味が豊かに残るという特長があります。そのため、非常にフルーティでフレッシュで口当たりが良いのが北海道のワインかなと。白ワインで特にそれがよく出ます。その反面、赤ワインに熟成感とか深みとかを求める人からすると、北海道のワインはまだ若いねとか、ちょっと軽いねと思われるかもしれませんね。」
軽めの赤ワインの楽しみ方にはどういったものがあるのでしょうか?
「軽めの赤ワインは食事とのバランスが非常に良いんです。熟成した高級な年代物のワインは、ワインだけを飲むことに意義がありますが、若くて軽いワインの方が、食事との相性はすごく良い。例えば肉料理で言うと、脂肪分が多いお肉は渋い赤ワインと合わせることで渋みがやわらいで美味しくなりますが、逆に牛の赤身やエゾシカなど油が少ない肉だと軽いワインの方が相性が良くなります。」
「余談ですが、実はイギリスとフランスでワインの捉え方って少し違うんです。イギリスではワイン単体での味を重視する一方で、フランスでは食事をしながら楽しむワインとしての評価をします。フランスのように、美味しい食事とあわせてワインを楽しめるような北海道になっていけたらいいなと思っています。そういう意味でも、北海道とワインというのはピッタリだと思います。」
聞けば聞くほど魅力的に思えてくる北海道のワイン。
それでは、実際にテイスティングしてみることに。
ソムリエと楽しむ、ワインテイスティング
このラボでは多様なワインが提供されていますが、特に来訪者に人気なのは「北海道大学オリジナルワイン」だそうです。これはボトルでの販売がされておらず、この場所でのみ試飲できます。北大のブドウを使用した、すっきりして飲みやすく、香りも良いワインとなっているそうです。
この北大限定のワインは以前、「いいね!Hokudai」でも取り上げています4(記事はこちら)。
その他にも、北海道各地から集められたワインの数々が置かれています。
筆者は3種飲み比べセットを購入しましたが、全12種類どれも魅力的で何を選べばよいか決められず…。
そこでせっかくならばと、ソムリエの阿部さんにオススメを伺いました。

まずは、すっきりとした白ワインから始めて、最後の方に味のしっかりとした赤ワインを飲むのがオススメだと教えてくれました。
同じく北海道で生産されている白ワインの中でも、昔ながらのドイツ系品種(ミュラー・トゥルガウなど)は酸味が効いているのに対し、最近主流のフランス系品種(シャルドネなど)は、酸味を上回る甘さやとろりとした食感があり、酸味を感じにくい傾向があるとのこと。
とろみがあるという点に興味を惹かれ、一杯目はフランス系品種の白ワイン「中富良野シャルドネ/ ドメーヌレゾン(中富良野町)」を試してみることにしました。
ワインを飲む前に、グラスを回しながらワインの色や粘度を観察してみると、それぞれのワインの特徴の違いがわかり、視覚でもワインを楽しめます。


2杯目はオレンジワイン「ソービニオン・ブラン オレンジ/ さっぽろワイン(札幌市)」に決定。オレンジワインは、白ブドウを使用しますが、赤ワインと同じように皮や種をつけたまま発酵させる製法で作られます。白ワインでありながら、しっかりとした渋みが特徴的です。
最後は赤ワインで締めようと、「山幸(やまさち)/ 十勝まきばの家ワイナリー(池田町)」をセレクト。
山幸は北海道オリジナルのブドウ品種で、耐寒性のあるヤマブドウを掛け合わせた品種です。独特の野生っぽい強い香りと、樽熟成による香りがマッチしています。しっかりとした香りが楽しめるため、「他のワインの味をかき消さないように最後の方に飲むのが良い」というアドバイスに合点がいきました。
この山幸というブドウの品種はマイナス35度でも大丈夫なほどの耐寒性を持ち、加えて酸味が強いため鳥にも食べられにくい、生命力の強い品種なのだとか。
今回の試飲では、これら3種類を飲み比べることができ、個性豊かな北海道産ワインの味わいを知ることができました。
北大ワインテイスティング・ラボに置かれている全12種類のワインは定期的に入れ替わっているため、一度訪れた人も少し期間を空けて再訪すると、新たな出会いを楽しめます。
観光スポットであると同時に、北海道のワインを世界へ発信する拠点へ
このインタビューの後はシンガポールへ赴き、北海道産のワインをPRしてくる予定だという阿部さん。
このワインテイスティング・ラボの役割は、「北海道のワインの価値を高めて、さらに世界に発信していく場所」になることだと話してくれました。
多くの外国人観光客が北海道に訪れる中で、「北海道には美味しい食べ物、ビール、そしてワインもあるぞ」とアピールできれば、輸出を拡大できると同時に、インバウンド向けの観光資源の提案にもなります。
また、大学内にある北大ワインテイスティング・ラボが北海道産ワインの魅力をアピールする拠点となることで、世界に対して「北海道のワインは、大学でも力を入れて研究されているんだ」というメッセージを発信できる絶好のチャンスにもなります。さらに、歴史ある建築物の雰囲気の中で飲むという付加価値も加わり、体験としても重みのある貴重なものになります。
北海道のワインを五感で味わうだけでなく、専門家の解説による豊富な背景知識や、北大の歴史的な雰囲気まで併せて楽しむことができる「北大ワインテイスティング・ラボ」。
みなさんもぜひ足を運び、北大の歴史を感じながら、北海道産ワインの魅力を発見してみてください。
北大ワインテイスティング・ラボ
〒060-0809
北海道札幌市北区北9条西8丁目
北海道ワイン教育研究センター棟ギャラリースペース(旧昆虫学及養蚕学教室)
【開館時間】
金曜日 12時00分~19時00分(LO:18時30分)
土曜日 10時30分~16時30分(LO:16時00分)
日曜日 10時30分~16時30分(LO:16時00分)
月曜日 10時30分~15時00分(LO:14時30分)
※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。
参考文献
- 北海道大学 北海道ワイン教育研究センター, https://sites.google.com/view/research-for-hokkaido-wine/home, (最終閲覧日: 2025年11月24日)
- 北海道大学CoSTEP, 「『ミツハの一族』白壁と青緑屋根の昆虫学及養蚕学教室[物語の中の北大No.17]」, いいね!Hokudai, 2024, https://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/like_hokudai/article/31997, 2024年5月13日(最終閲覧日: 2025年11月24日)
- 阿部眞久, 「北大ワインテイスティング・ラボのご紹介」, NPO法人 ワインクラスター北海道, https://winecluster.org/archives/11593/, 最終更新日: 2025年11月1日(最終閲覧日: 2025年11月24日)
- 北海道大学CoSTEP, 「#204 生まれ変わる、旧昆虫学及養蚕学教室と旧昆虫標本室。」, いいね!Hokudai, 2023, https://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/like_hokudai/article/30509, 2023年9月28日(最終閲覧日: 2025年11月24日)