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#248 建築家・松島潤平に迫る(2)〜「芸人的研究者」独自の知的好奇心と哲学を持つ

前半では、松島潤平さんの建築に関するこだわりやお仕事について聞きました。

後半では、松島さんの教育観や影響を受けた人物や哲学と建築思想の関係性、知的好奇心の源に迫ります。

【池田倖乃・総合理系1年/ 梅津侑奈・医学部1年/金指心・総合文系1年/澤田彩胡・法学部1年/月森裕哉・経済学部1年/渡部佑碧・総合理系1年】

(取材の様子)
松島さんは、ご自身の事務所を持っていらっしゃると思うんですけど、その事務所を設立したきっかけをお聞きしたいです

根本的に僕は独立志向なんですよ。小さい頃の将来の夢は「発明家」でして、それってつまり頭の良さへの憧れとともに、芸人的な目立ちたがりの独立願望が混ざってたんですよね。いつの間にか建築の道に入り込みましたが、そこでもそうした性質から「自分の建築を作りたい」っていう気持ちはずっとありました。

ただ、いつそれを実行するかっていうのは、やっぱり人生の運みたいなものがあって。僕は、隈研吾さんの事務所に修士を卒業してから6年半くらいいたんですが、ずっとプロジェクトが山ほどあって辞め時がなかったんですけど、2011年にピタッと全部の担当プロジェクトが竣工して、同時に友人から個人的に仕事の相談が来たんです。だから「これは神が辞めろと言っているんだ」と半分冗談で感じて、勢いで独立しました。

隈研吾さんの事務所で働かれていたということですが、隈研吾さんの凄さはどのようなところだと思いますか?

身近に見ていて感じたあまり知られていない隈さんの凄さは、どんな角度からでも振られた話題に一つ雑学を乗せて返すところです。つまり博識なんですよね。豆知識みたいなものを乗せて、どんな相手ともすごく発見のある会話を続けていました。「雑学は身を助ける」なんていうけど、それ以上に、雑学があるから人から愛されていることや、雑学を得て提供すること自体が仕事になっているようなふるまいを見て、実は隈さんの処世術の根本って「雑学キャラ」にあるんじゃないかと感じました。移動中もよく本を読んでましたし、純粋な読書家ですね。

松島さんが建築に役立てていることはありますか?

そこに重ねたいわけではないんですが、僕もかなりの雑学キャラでして。兄も父もクイズ王みたいな家庭で育ちました。マンガだったり音楽だったり、あらゆる情報や知識をふんだんに使って建築のコンセプトを作っています。専門情報だけでなく、いろんな文化的な情報を同じまな板に載せられるところが、建築という総合芸術的分野の最大の魅力であり、強みだと思ってます。

建築士としてそのまま生きていくということもできたと思うんですけど、北大の公募に応募してあえて教職を引き受けた理由は何ですか?

一つ大きい理由は、私の子供が三つ子なんですよ。20年住んでいた東京において、三つ子という特殊な育児に少し手詰まり感を感じていて、ほかの場所での生活を考え始めたのがまず一つです。そして二つ目の理由はコロナです。2020年かな、コロナになった時に、事務所の仕事をほぼリモートワークでやっていたので、場所に囚われなくても仕事ができるという感覚が、結構その時に明確になってきました。そして三つ目が、私が博士号を取った時期と同時に、北大が実務的な建築デザインを教える教員の公募を出したことです。博士号を持っている建築家というのは結構レアということもあり、採用いただいて、しばらくここで子育てと建築設計と教職をしていく気持ちが出来上がりました。

東京時代も非常勤講師として色んな大学で教えていたのですが、学生を鼓舞しながら、一緒に楽しんで面白がってると魅力的な建築が生まれてくるっていうことが、僕も好きだし、学生も見てて楽しそうにやってくれてるから、設計教育に向いてるんじゃないかなって気持ちもやっぱりあったんですよね。何より、学生に触れている方が、新しい情報が手に入るということも大きいです。

雑誌は学生の方が全然読んでるし、今だったらSNSで、地球上のなんかよく分からない建築とかを見つけてきたりするので、新鮮な情報の場という意味では、アカデミズムというのはすごく重要な居場所ですね。

過去のインタビュー記事で、松島さんは「べき論」がお好きではないと仰っていましたが、松島さんの中でのその思想であったり哲学であったりというものはやっぱりご自身の建築に影響を与えていますか?

もちろん与えていますね。構造主義やニヒリズムに影響を受けているので、本当にあるかないかわからない正しさを前提にするような「べき論」はあまり好んでないですね。「べき論」を避けるような哲学を展開した偉人は歴史上に主に三人いて、彼らの影響を強く受けています。

1人目がソクラテス。無知を知る。やっぱりあの人は本当に天邪鬼で、「お前は本当にそれを知ってんの?」って問い続けるニヒリズムを明示した最初の人。

2人目は2世紀頃にインドにいたナーガールジュナっていう人。和名称は「龍樹」。彼の『中論』っていう思想があるんですけど、「すべては中庸である」という偏りがない世界の捉え方に共感しています。人間はある働きを持った点であり、その因果関係しかないというドライな考え方なんですよね。

3人目は日本の一休さん、一休宗純。彼自身は何かを成したわけじゃないんだけど、彼の無尽蔵なエネルギーに触れた弟子たちが、詩や茶道や水墨画といった一筋縄ではいかない複雑なカルチャーを作っていったんですね。そしてそのエネルギーの根底にあるのは、天皇のご落胤として生まれながら俗世に落とされた彼の数奇な運命に基づく巨大なニヒリズムなんですよ。「これは正しい」とか「こうあるべき」っていう前提条件に唾を吐き続けると、新たな人間の生命力や文化が生まれる。そういう思想です。

こんな昔の変人を敬愛して誇大妄想的なことを言ってる建築家はあまりいないんですけど、そういうニヒリズムをどう建築に落とし込むかっていう些細な試みが、「命令的でない選択肢が集まった建築/トランスオルタナティブ」という建築思想に繋がっていくわけなんです。

ちなみに、20世紀初頭は「モダニズム」と言って、正解を求める建築、世界中の健康的な都市にはこういう建物がいいんですよというのをいっぱい作っていた時代なんですね。それが1度飽和して、「ポストモダニズム」というもっとユニークなものがあってもいいじゃないかというカルチャーになっていたんですけど。

そういう話に通じてくるんですが、やっぱりその仕掛けはやっぱりニヒリズムなんですよ。常に今を疑う、自己矛盾を受け入れるという態度が大事。

(自身の哲学について語る松島さん)
父親、教員、建築家の三つの顔があると思うのですが、この三つの役割をこなす上での意識していることや共通点はありますか?

面白がることですかね。知的好奇心に従って、父親としても教員としても、子どもや学生、もちろんクライアントといった大人とも、一緒に全力で面白がる。そのスタンスは変わらない。色々考えると、結局一級建築士としても、建築家としても、設計って「その敷地条件を面白がっている」っていうことなんだと思います。

その敷地ならではのユニークなポテンシャルを生かした「料理」の仕方を見つけられるか。そして、こっちの知識が増えれば増えるほど、面白がるポイントにいっぱい気付けるわけですよね。なので僕はどこまでも「勉強」を肥大化させたいというか、勉強し尽くしたいですね。そういうスタンスでいれば、必然的に親であろうが教育者であろうが設計者であろうが、仕事が遂行されていくという感じかもしれないです。

学生を見ていても、知的好奇心がないと建築という分野をあんまり選んでこないと思うんですよね。で、そういう仲間に囲まれるっていうことが何よりの価値だとは思います。建築スタジオ等で徹夜して模型つくって、とかってやってると、なんか必然的に戦友っぽくなってくるしね。タフだけどユニークな青春が手に入るっていうのは建築都市コースが持つ大きい価値だと思います。

(取材後の集合写真)

今回のインタビューでは、松島さんの建築家としてのお仕事や建築観、教育観や影響を受けた人物、哲学と建築思想の関係性、知的好奇心の源について迫りました。全取材を通して、松島さんご自身の経験や研究内容、考え方について沢山お話ししてくださり、とても有意義で楽しい時間を過ごすことができました。特に、松島さんの言っていた、「常に我々は建築から命令を受けて動いている」という視点は、初めての考え方で、新たな知見を得られて良かったです。取材を快諾してくださった松島さん、本当にありがとうございました!

この記事は、池田倖乃(総合理系1年)、梅津侑奈(医学部1年)、金指心(総合文系1年)、澤田彩胡(法学部1年)、月森裕哉(経済学部1年)、渡部佑碧(総合理系1年)が、主題別科目「北海道大学の”今”を知る」の履修を通して制作した成果です。

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