皆さんは心理学についてどのようなイメージをお持ちですか? 心理学には、認知心理学、知覚心理学、社会心理学など様々な種類が存在します。今回私たちは認知心理学を研究されている河原純一郎さん(文学研究科 心理システム科学認知行動科学研究室 准教授)に、認知心理学における「注意力」・「魅力」・「顔研究」についてお話をうかがいしました。
【岡田裕樹・総合文系1年/北村亜藍・総合文系1年/高橋美紗・総合文系1年】
(河原純一郎さん)
―先生は構内に心理実験の被験者の募集広告を掲示していました。掲示物に注意を促すように工夫したのですか?
台紙はかなり注意を引くビビットイエローです。さらに、他の掲示は白が多く使われているので黒を基調にしています。デザインは研究所のメンバーで出された案の中から、ユニークなものを採用しました。北大は掲示物多いですよね。だから、上に他の掲示物を重ねられないように、紙を厚くしているのも工夫のひとつでしょうか。
―最近の注意についての研究にはどのようなものがあるのですか
被験者に文字を探す作業をさせているとき、近くに電源を切っているスマートフォンを置いておきます。すると、メモ用紙を置いた時よりも作業の成績が大体15%くらい落ちてしまうことが判明しました。スマホに注意を奪われてしまうのでしょう。勉強中には近くにスマホを置かないように気を付けた方がいいですね。
―注意力を上げる方法はありますか?
記憶の中には、一時的な記憶を留めておく作業記憶と呼ばれるものがあります。作業記憶の容量が大きい人は注意力があると言われています。ただ,これさえすれば注意の能力が上がるという単純なしくみにはなっていません。邪魔になるものは遠ざけるのが手っ取り早いかもしれません。
(インタビューの様子)
―では次に魅力研究について教えてください
様々な種類の心理学の中で、社会心理学の「ある一定の情報から相手の特徴や性格を想像する研究」が魅力研究の始まりです。また、認知心理学・知覚心理学では魅力研究として外見に関わる研究が多いです。顔の傾きや動作のような知覚的な属性や周囲の状況・文脈といった認知的な側面が対象者の魅力やパーソナリティの知覚に影響する可能性を調べるというように展開してきています。
―どうやって人は魅力を感じるのでしょうか
認知も知覚も、人と人との違い差である「差分」が影響しています。人が、その「差分」をポジティブに捉えると魅力を感じます。さらに、単独よりも周りと比べて評価する方が、より魅力的に見えるという話もあるので、「対比」や「差分」が魅力に大きく関わってきます。
(差分について示す河原さん)
―人は何を基準にポジティブにと感じますか
人がポジティブに判断するかどうかの基準に“わかりやすさ”というものがあります。何度も見たことがある人は話したことがなくても親しみや安心感を覚え、ポジティブに感じます。これを「単純接触効果」と呼びます。コマーシャルは、似たような商品を何度も見せることで、この効果を使って商品の魅力を高めているのです。
―河原さんは顔画像を使った研究をたくさん行っていらっしゃいますね
一般に人は顔見ることが好きですよね。学生さんも顔の話が好きで、顔画像の研究を知って、顔研究やりたいという学生さんが研究室に来てくれることも多く、私自身も顔に関する研究について興味がさらに広がりました。人には顔だけに応答する脳細胞の集合があります。その細胞を研究して表情を読み取るなどの研究もあります。また、顔画像を使った研究は、顔認識や画像認識、表情を読み取るなど、社会的に多くの応用面があります。私にとって顔研究は「多くの学生が興味を持っていること」「社会に役立つ研究が多いこと」の二点で大きな意味があります。
―では、人間がその時に感じている気持ち・感情は顔に表れるものなのでしょうか
おそらく出てくるとは思います。人間がコントロールできる筋肉とできない筋肉があって、笑い顔と作り笑顔では使う筋肉が違います。これらの判別を訓練することで警察・司法場面などで、「嘘ついている人は誰だ」などが焦点にもなります。やはり表情を自分で操作するのは難しいことです。このように社会的な応用先が多いという意味も含めて、顔研究はやりがいがありますね。
~インタビューを終えて~
「研究者の方にインタビューする」という普段なかなかできない貴重な体験を通して、普段の生活にも密接な関わりを持つ心理学について多くのことを学ぶことができました。この記事を読んで皆さんにも心理学に興味を持っていただけたら幸いです。
(インタビューを終えて集合写真、古河講堂にて)
後編では河原さんのお勧めの書籍を紹介します。
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この記事は、岡田裕樹(総合文系1年)、北村亜藍(総合文系1年)、高橋美紗(総合文系1年)が、2017年度全学教育科目「北海道大学の”今”を知る」の履修を通して制作した成果物です。