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#83 連環画、乳房、八戒、飛行機械(2)~研究も人生も居場所も「すみっこ」がいい

中国文化を、連環画をはじめとした独自の切り口で研究されている武田雅哉さん(文学研究科 教授)。そのお宅には、我々からすると玉とも石ともつかない雑多なメディアや雑貨、書籍の数々が所狭しと収められていました(前編参照)。一見するとなんの共通性もないその中には、武田さんの興味を惹きつける特徴「すみっこ」が隠れていたのです。一般的な研究対象となる正統派の芸術や文学から外れて隅に追いやられてしまう「すみっこ」のものたちに情熱を注ぐ武田さんは、自身も「すみっこ」に生きる者だと言います。

【中谷操希・CoSTEP本科生/生命科学院修士1年、鈴木夢乃・CoSTEP本科生/理学部3年】

(書庫の本棚の隅からひょっこりと顔を出す武田さん)
進路だって研究だって「すみっこ」がいい

武田さんが中国文化研究に足を踏み入れたのは、北海道大学の学部2年生のときでした。今ではどっぷりと中国文化にはまっていますが、はじめは江戸時代の漫画である黄表紙を研究しようと思っていました。しかし、その進路を変える大きなきっかけがありました。「1年生のときに面白かった講義を担当していた、中国文学専攻の中野美代子先生と話したときに、『中文来たら酒飲ませるからおいで』って言われて、『じゃあ行きます』って。中国文学のことは全く無知でしたけど」と笑顔で語る武田さん。黄表紙を研究しようと考えていた当時の武田さんにとって、中国文学は進路として考えたことのなかった「すみっこ」でした。

(居間に置かれていた多種多様なお酒のビン。お酒好きの武田さんに学生がお土産に買ってきてくれるそうです)

また、今では武田さんの研究の中心になっている連環画ですが、もともとは研究対象にしようと考えたこともなかったそうです。「学生の頃は、なんて政治的でつまんないんだって嫌ってて。もともとは、恩師の丸尾常喜先生(2008年逝去)が北大を辞めるときに『じゃあ君これ置いてくよ』ってごそっと置いて行ったのが始まり。ただ、博物学と同じで、モノが増えることで見えてくるものがあります。1冊1冊つまんないなって言ってても始まんない。もっと発掘して面白いことが見えてきたらいいなと思います」

(数十冊の貰い物から始まった連環画コレクションも今では1万冊以上に)〈撮影:中村健太〉

進路でも、研究でも、考えていた範囲外のものに落ち着き、自身の「すみっこ」を取り込んできた武田さん。だからこそ、意中の学部へ移行するため、成績にピリピリとしている今の学部1年生を見て思うことがあると言います。「最初から自分で決めない方がいいと思うんです。そんなに可能性を絞らなくても。行きたかったところに行けなかったら、そこで新しいことが始まるよって学生には言ってるんですけどね」。このメッセージは、大学での学部学科移行のみならず、就職や人生のさまざまな転機にも当てはまるのではないでしょうか。

「すみっこ」を広げていく理系~「怪物」だらけの世界

「怪物」がいる「すみっこ」を見るなんて、文系の世界だと思っていませんか。しかし、本当の「怪物」は理系の世界にこそたくさんいる、と武田さんは言います。「理系の世界って怪物だらけなんです。突然変異とか未知の病原体を研究したり、新しい機械を作ったり、宇宙やったり。たくさんの怪物に、理系のあなたたちがこれから出会うんだって、覚悟しろってことですね。だから僕、『怪物論』は文系理系関係なくむしろ理系の人たちに触れてもらいたいと思って開いています」

〈撮影:中村健太〉

未知の世界を探求し続ける理系はまさに「すみっこ」を広げていく者。そこにはまだ知られていない「怪物」たちがひしめいています。人々の認識の範囲ギリギリにいる、一部しか見えていないものの全貌を解き明かす理系は武田さんの言う「怪物」と最も近い者たちなのかもしれません。

(武田さんの愛読書には物理学者で文筆家でもある寺田寅彦も。「やはり文章が別格です」とのこと)
「すみっこ」を探し続けること

これまでずっと「すみっこ」を求め研究し続けてきた武田さんは、これからもずっと「すみっこ」の住人でいるようです。「今は漫画研究とかアニメ研究とか、周辺・サブじゃなくなってきたんです。だから、それがメインになったらやめようかと。また次なるすみっこを探して」さらに「まぁ飲み会でも、いつも私すみっこ座るのが好きなので。だから日本でも北大がいいですね」と続けた武田さん。「すみっこ」は研究のみならず自身の生き様として深く染みついているのでしょう。

武田さんを紹介しているこちらの記事もご覧ください

  • 【クローズアップ】#82 連環画、乳房、八戒、飛行機械(1)~「すみっこ」蒐集からみえてくる中国文化(2017年12月25日)

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2018.01.10

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