ラーニングサポート室は北大生の修学・学習支援を行う組織です。学びを支えるための活動も、コロナ禍で変化を強いられることになりました。今回は、ラーニングサポート室の佐々木伸さんと須田裕介さんに、普段の活動やコロナ禍における試行錯誤について伺いました。
【小林良彦・CoSTEP特任助教】
総合入試とラーニングサポート室
北海道大学では、従来の学部別入試と併せて、「文系」「理系」という大きな括りを募集単位とした「総合入試」が2011年に導入されました。総合入試で入学した学生は、1年間、教養科目や基礎科目を学び、2年次への進級時に学部・学科を選択します。選択は本人の志望と成績に基づいて行われます。
総合入試の導入に伴い、2年次以降の進路選択や志望通りの学部・学科選択をするための成績についての悩みを抱える学生の増加が懸念されました。また、一人ひとりが受ける授業もより多様になるため、修学・学習支援の必要性も高まりました。それらのニーズに応えるため、2010年にアカデミック・サポートセンターが設立されました。その後、アカデミック・サポートセンターが2015年に高等教育研修センターラーニングサポート部門(ラーニングサポート室。以下、LSO)へと名称が変更になりました。今年12月には高等教育研修センターが改組され、より一層の支援体制の強化が図られています。
ラーニングサポート室の役割
LSOの役割としては、「進路選択支援」「学習支援」、そして、「データ分析」が挙げられます。
「進路選択支援」としては、学部・学科選択に関する相談を受け付けること、また、それぞれの志望に沿った授業を選ぶ際の相談に乗ることの他、1年生向けに開催される学部・学科等紹介での時間割展示やアカデミック・アドバイザーによる相談会といったイベントの開催、北大の研究キーワードを集めたアカデミック・マップの作成等も行っています。
「学習支援」としては、大学院生チューターによる数学、物理、化学、英語といった日ごろの学習における質問などへの対応が挙げられます。また、スタディ・スキル(アカデミック・スキル)に関するセミナー開催や勉強のワンポイントアドバイスをまとめたプリント作成といった形式での支援も行っています。
それらの支援に加え、LSOでは、相談内容、学部・学科選択の希望や、アドミッションセンターが実施する全学的なアンケートに関する「データ分析」も重要な業務の一つです。
コロナ禍におけるラーニングサポート室
コロナ禍になって、学生がキャンパスに来ない状況となり、LSOが展開していた支援活動も大きな変化を強いられることになりました。どのような変化があったのか、また、どのような試行錯誤をされているのか、LSOの佐々木さんと須田さんに伺いました。
コロナ禍以前はオンラインでの活動はされていたのでしょうか。
佐々木さん: ウェブサイトに資料を公開していたこと以外は、オンラインの活動はやっていなかったですね。
では、コロナ禍になったことで、オンラインでの活動を新たに開始されたのでしょうか。
佐々木さん: 例年は対面で行っていた進路相談や学習相談をオンラインで行うこととしました。進路相談については、まずは専用の問い合わせフォームでの受付を開始し、9月からビデオ通話での相談も開始しました。一方、学習相談は、例年であれば飛び入りで質問に来ることができたのですが、事前予約制とし、ビデオ通話を使うことになりました。また、スタディスキルのセミナーについては、オンデマンド教材を配信することにし、いつでも視聴できるようにしました。
この他にも、これまで配布してきた資料の電子データでの配布も行ってきました。特に1学期当初は図書館が閉鎖されており、学習を進める上で必要な資料が手に入りづらい状況でしたので、新規の学習資料作成にも力を入れてきました。これらの教材や資料は専用のmoodleページを開設したので学生であれば誰でも閲覧、ダウンロード可能です。
相談の件数は例年通りなのでしょうか。
須田さん: 進路に関する相談については、やや少ない、といった感じでしょうか。例年は、4月のオリエンテーションでLSOの紹介をしていたのですが今年度はできませんでした。そのため、4月の段階でLSOを知らない学生が多かったのかと思います。一方で、例年に比べて、9月末から10月初めにかけての相談件数は多かったです。
4月から9月の間にラーニングサポート室を知った学生が多かったのでしょうか。
須田さん: 入学時の資料にはLSOについても書かれているので、それを見てくれたのが一つの要因だと思います。二つ目はツイッターですね。アカウントは以前から運用していたのですが、この4月からは情報の拡散手段として重要視して、スケジュールや履修関係の情報など、LSOでキャッチした情報を発信していました。反響が結構大きくて、4月から5月の間だけでフォロワーが900人くらい一気に増えました。
学習に関する相談や質問の件数はどうでしょうか。
須田さん: 学習に関する相談は激減しています。でも、ニーズがない訳ではないと思います。オンライン化に伴い完全予約制となったことでハードルが高いのではないかと考えています。そこで、学習相談のPRも兼ねて学生同士で話す機会として、オンライン談話会を開催したりしました。情報交換の機会として使ってもらえれば良いかなと。評判が結構良かったです。しゃべりたい学生は多いのでしょう。
気軽に話せるオンライン談話会、良いですね!
佐々木さん: オンライン談話会を始めようと思ったきっかけは、6月くらいから、課題の負担が大きいという相談や意見箱への投稿が増えたことでした。それが一部の意見なのか、多くの学生が感じていることなのか調べるために、7月にアンケート調査をしたところ、1800件以上の回答をもらい、自由記述もたくさん書いてくれていました。新入生にとっては大学に行くことすらできない状況が長く続き、学習の進め方や学生生活について不安や不満が募っていたのだと思います。
コロナ禍で学生も大変な思いをしているのかもしれませんね。お二人から北大生に向けて、メッセージを頂けないでしょうか。
佐々木さん: 大変な時期だと、みんな感じていると思います。ただ、大変になったのは個人に責任があることではないので、思い込みすぎないでほしいです。「大変だ」と一人で抱えてしまわないで下さい。大学の中にも、いろいろとサポートしてくれるところはあります。私たちもオンラインでサポートする機会を頑張って提供していきたいと思っているので、気軽に利用して下さい。
須田さん: 気楽にやってほしいなと思います。楽しむっていう状況ではないですけど、あまり深刻にならないようにしてほしいな、と。気軽に、LSOみたいな組織を使いつぶしてやるくらいの気持ちで(笑)、使ってもらえると良いかなと思います。
佐々木さんと須田さんが所属するラーニングサポート室のウェブサイトはこちら。