11月末の某日深夜3時、寝静まる北大の中、ここだけ煌々と明かりのともる生物生産研究農場に学生の歓声があがります。スマホのカメラを片手に視線を送る学生の中心で、いま、牛の赤ちゃんが生まれました。
これは牛の出産を学ぶ獣医学部5年生向けの実習風景です。遡ること3時間前、母牛の破水の連絡を受け、学生たちが集まっていました。牛の獣医師の仕事に、難産時の分娩介助があります。今日、大きな介助の必要はありませんでしたが、学生たちはこの日のために何日も前から寝るときにはスマホを枕元に、破水の連絡を待っていました。
大変な仕事ですが、学生の中には卒業後、牛の獣医師を目指す学生もいます。牛のかわいさや、社会の需要が高く、安定した就職先であることだけでなく、「食に関われる職であるということ」「残念ながら動物が亡くなってしまう場に立ち会うことも多い獣医療の分野で、生まれる瞬間に立ち会えること」など、この仕事の魅力を語る彼女たちは、学生ながら獣医師の姿です。
今日生まれた子牛が成牛になるころには、彼らも獣医師として働き、またどこかで新しい命と向き合っているかもしれません。その日に向けて実践を積む学生たちの一辺を垣間見た夜でした。
【本平航大・獣医学院博士3年/CoSTEP修了生】
取材協力:
- 北海道大学大学院獣医学研究院繁殖学教室
この記事は、本平航大さん(獣医学院博士課程3年)が、獣医学院「インターンシップ」の履修を通して制作した成果です。