「有機大富豪」の教室からふたつ隣、高等教育推進機構のE304で、トランプの大富豪を楽しめる一角があります。しかしここは北大祭、ただの大富豪じゃありません。素数関連の数字しか場に出せない…「素数大富豪」です。素数を覚える知識だけでなく、時に「素数っぽい」という己の直感を信じて場に出すチャレンジ精神、そして生まれる奇跡の出会い。体験してみました。
基本ルールは大富豪と同じ。より大きな数字を場に出して、手札がなくなれば勝利です。ただし縛りがあります。例えば場に「2」のカードが一枚ある場合、次は2より大きい素数を出すことができます。出せるカードは、3、5、7、11(Jack)、13(King)です。誰もカードを出せなくなったら場が流れます。そして、最後にカードを出したプレイヤーが手札から好きな素数を場に出します。カードを二枚出す場合だと、例えば「7」と「9」を並べて二桁の素数「79」を作ったら、次の人はカード二枚の組み合わせでより大きな素数を場に出す必要がある…といった具合です。
大富豪でいう「八切り」や「革命」と同じ効果を持つ特殊ルールも存在します。単に相手より大きな素数を出せばいいワケじゃありません。素数を作れない時は山札からカードを一枚引きますが、あえて手札を増やし続けて巨大な素数を目指す戦略もアリです。自分の手番で場のカードが流れた瞬間、カードを四~五枚使って一気に大きな素数を作り逆転勝利を目指す、なんて展開も。
大富豪の戦略性に素数の知識量が問われるゲームですが、直感に頼ったチャレンジ精神も面白さを引き立てます。例えば筆者の手札には「10」と「11」のカードが。「1011」を作れば素数っぽいので通りそう、と試しに出してみます。するとすかさずスマホアプリの「素数チェッカ」で素数か確認。調べると…1011は3×337で求められるので素数ではありません。ペナルティとして山札から二枚引き、手札が増えてしまいました。残念!
続く二戦目では手札に「10」と「13」の二枚がありました。「もしやいける?」と思って「1013」を出してみると…1013は素数でした! やった!
この「素数っぽい」組み合わせで挑戦し本当に素数だった時の、宝を掘り当てたような感覚は素数大富豪ならではの醍醐味です。直感を極めれば、膨大な手札を使って素数を探し出す離れ業をやってのけます。ちなみに6月4日の熟練プレイヤーが出会った最大の素数は「4131313335256741211871313」と実に25桁。もちろん記憶しているわけがなく、知識と経験に裏打ちされた直感で大量の手札を使って導いた素数です。まさに運命的な出会いを体感できる大富豪と言えます。
「実はオンライン対戦も可能なので、どこでもできますよ」と教えてくださったのは、北大素数大富豪同好会の代表である亀田真吾さん(理学部数学科3年)。北大入学前からツイッターなどSNSを通じて素数大富豪のことを知り、その面白さにのめり込んでいったそうです。
2019年に発足した同好会、北大祭で対面の体験会を開くのは3年ぶりです。「ニンニク(229)やババロア(8861、1はトランプだとA)など素数は語呂合わせで覚えます。歴史の年号を覚える感覚に近いかもしれません。数学への苦手意識とは関係なく楽しめるので、ぜひ遊びに来てください」
【江口剛・CoSTEP本科生/水産科学院博士2年】