いいね!Hokudai

  • About

Categories

  • 歳時記
  • クローズアップ
  • フレッシュアイズ
  • ジョインアス
  • チェックイン
  • 匠のわざ
  • ようこそ先輩
  • バトンリレー
  • みぃつけた
  • おいしいね
  • 過山博士の本棚から
  • フォトコンテスト

#185 犬の命を守りたい~血管肉腫研究を加速させるクラウドファンディング~

年間約13,000頭の犬が有効な治療法がないまま亡くなる病気。「血管肉腫」。青島圭佑さん(獣医学研究院 助教)は、この病気の治療を可能にするために基礎研究を進めるべくクラウドファンディングに挑戦しています。

200万円の目標金額まではあと約140万円。12月26日締め切りですが、プロジェクトページにはすでに寄付を行った支援者の方々からの応援コメントがたくさん寄せられています。愛犬を血管肉腫で亡くした方や獣医療の発展を願う方からの応援に後押しされ、締め切りまでの残り1か月余りゴールを目指して駆け抜けます。

このクラウドファンディングは北大と国内最大級クラウドファンディングサービスを運営するREADYFOR株式会社との業務提携後第一号プロジェクトとなり、北大にとっても新しい取り組みになります。

【森沙耶・北海道大学CoSTEP】

(獣医学研究院の標本展示室にて。学術的価値のある貴重な資料がたくさん展示されています)
治療の手立てのない血管肉腫

犬の死亡率1位はがんであり、血管肉腫はそのうちおよそ3%を占めています。血管を作る血管内皮細胞由来のがんで、人や他の動物よりも犬がかかりやすい病気です。犬の脾臓や肝臓、心臓に多く発生し、多くの犬が治療法がないまま亡くなっているものの、そのメカニズムは明らかになっていません。

犬のように人と共に暮らし生活を送る動物は伴侶動物と呼ばれています。生物多様性に影響するような野生動物や、人の経済活動に関わる牛や馬などの産業動物よりもこの伴侶動物の研究は研究費がつきにくいという現状があります。

しかし、身近で家族同然の動物だからこそ治療できない疾病に対して研究が進んで治せるようになってほしいというニーズは高く、実際に青島さんの元にもペットが血管肉腫になってしまった方から「なにか治療の手だてはありませんか」というお手紙や、血管肉腫の患者犬を診察している獣医師さんから「治験は進んでいますか」といった問い合わせが来ています。

寄付で叶う研究の未来 

こういった問い合わせに対して、まだ基礎研究であり臨床の段階ではないことを伝えなくてはならない現実を心苦しく思っており、このような方たちのためにも少しでも先に研究を進めたいところではあるものの、現在の研究費は年110万円。

この金額でも研究は進められますが、チャレンジングな実験を行うことはできず、新しい治療法の開発に繋がるような画期的な結果を出すことは困難です。血管肉腫を治療可能にするためには、血管肉腫の基礎研究を加速させる挑戦的な実験が必要となります。

そこで、青島さんはシングルセル遺伝子発現解析という実験を計画しています。この実験によってがんの詳細な性質を理解することができ、新しい治療法開発への重要なデータを生み出すことができますが、シングルセル遺伝子発現解析は血管肉腫では未だ行われたことがありません。

青島さんはこれにトライしようとしていますが、この実験には一回当たり約100万円がかかり、今の研究費をたった一回の実験で使い切ってしまいます。これでは予備実験も行うことができません。この研究を進めたくても進められないという壁を打破し、臨床研究へ進めるためのアクセルとしてクラウドファンディングに挑戦することにしました。

今回ゴールに定めた200万円を達成することができれば予備実験に加えてもう1回実験をおこなうことができます。これにより、血管肉腫研究を大きく発展させるための十分な量のデータを得ることができます。

(実験室での実験のみならず、あらゆる動物の病理解剖も行います)

このプロジェクトには青島さんのほか、学部生の頃から血管肉腫の研究を行っている博士課程の鈴木玲海さん、そして獣医学部に隣接する動物医療センターで日々患者犬の治療にあたっている臨床獣医師の金尚昊さんと木之下怜平さんも加わっています。金さんと木之下さんも飼い主さんと直接やり取りする中で治療の術がないことに悔しさを感じており、この研究が資金獲得によって加速することを強く望んでいます。

(プロジェクトメンバーの木之下さん(右)とは基礎研究と臨床研究というフィールドは違えどともに血管肉腫と戦っています)
比較病理学の発展に寄与したい

青島さんの所属する研究室「比較病理学教室」の名は、ウサギのタール癌研究で知られる市川厚一博士(1888-1948)によって「獣医病理学は基礎医学にも貢献する学問領域である」という考えのもと命名されました。血管肉腫の研究もその発症率の低さから人の分野ではあまり研究が進んでおらず、このクラウドファンディングを機に研究が進めば犬はもちろんのこと、将来的に人や他の動物への応用も期待されます。青島さんはその期待を込めてプロジェクト名にあえて「犬」という言葉を入れませんでした。

獣医学の世界で基礎研究から臨床研究へ移行するには早くても10年はかかるそうですが、皆さんの支援が研究を加速させ、ステップアップにつながります。ぜひ応援したいですね!

(11月17日には北大・READYFORクラウドファンディング第一号として記者会見が行われました)

青島さんがチャレンジするクラウドファンディングは、現在受付中です。

プロジェクト名:血管肉腫を治療可能にするために、基礎研究を加速させる

期間:~12月26日(月)23:00
コース:5千円/1万円/3万円/10万円/30万円/50万円/100万円
目標金額:200万円
第二目標:400万円
詳細はこちら

Information

Update

2022.11.18

Categories

  • クローズアップ
  • Twitter

投稿ナビゲーション

Previous
#43 少年ジャンプの連載作家に聞く、水産学部で学んだこと/権平ひつじさん(漫画家)
2022.11.17
Next
  • チェックイン
#186 犬なくして研究できず、極夜の異世界シオラパルク
2022.11.22

Related Articles

    • クローズアップ
    「ほんとうに、動くの?…わあ、動いた!」北大で、女の子の可能性を広げるSTEAM教育体験イベントを開催
    2025.05.09
    • クローズアップ
    #206 世界中に広がるウイルスにデータ解析で立ち向かう ~ガブリエルさんが見せる「リベロ」的な研究者像[いつかのための研究 No.4]
    2025.04.02
    • クローズアップ
    #205 人も動物も救うワクチンを目指して~ワクチン研究に込めた田畑さんの思い[いつかのための研究 No.3]
    2025.03.30
    • クローズアップ
    #204 ワクチン?何それ、おいしいの? 〜経口ワクチンで狂犬病から世界を救え!〜
    2025.03.21
いいね!Hokudai
Official
Site