毎年6月、蚕の飼育がFSC生物生産研究農場の養蚕室ではじまる。おおよそ25日で繭をつくるまで、休みなく桑の葉が与えられる。
映像の前半は、孵化したばかりの蚕を6月1日に掃き立て1)してから22日目までの日々の成長。後半は、21日目の朝から翌朝までの24時間密着早送りの様子。ご覧のとおり旺盛な食欲だ。しっかり栄養をたくわえて繭をつくってもらうために、後半映像の途中、時刻にして午後4時ごろに桑の葉のおかわりを与えている。このあと、繭をつくるための足場に移す作業である上蔟(じょうぞく)2)が数日後におこなわれ、さらにその3日ほど後に、蚕たちは繭を完成させる。
北大札幌キャンパスの西側は桑園地区と呼ばれる。明治時代、開拓使によって養蚕を勧めるために拓かれたことが由来だ。旧昆虫学及養蚕学教室の名がつく古建築が今も残る本学も、120年前から養蚕をおこなっており、名実ともに桑園とはそう縁遠くない。化学繊維全盛の現代、今更養蚕?と思われるかも知れないが、遺伝子組換えによる特定タンパク質の生産で医薬品開発において脚光を浴びている。
そんな伝統的かつ今日的存在である蚕も飼っているFSCとはField Science Center for Northern Biosphere, Hokkaido University、北方生物圏フィールド科学センターの略称である。
【林忠⼀・北⽅⽣物圏フィールド科学センター/いいね!Hokudai特派員】
注
- 掃き立てについてはこちらの記事参照。「蚕も立派な家畜です[FSC的フィールド風景No.6]」(2022年6月14日)
- 上蔟(じょうぞく)から毛羽取りまではこちらの記事参照。「繭色々[FSC的フィールド風景No.7]」(2022年7月12日)