北大祭では、一般のみなさまを対象とした、北大教員による無料の公開講義(https://hokudaisai.com/event/event-itr/p-class.php)が開催されています。人文・社会科学総合教育研究棟W103共同講義室にて、8日(土)は4講義、9日(日)は2講義予定されています。
このうち、ひとつ目の講義「思春期になると、なぜ問題を起こせるようになるのだろう?」に参加してきました。講義担当は教育学研究院の加藤弘通先生です。加藤先生は発達心理学がご専門で、特に、思春期の発達とそこで生じる問題に関心をお持ちです。今回の講義では、発達と子どもの問題の関係について、いまわかっていることをお話してくださいました。
発達の一般的なイメージは、「できなかったことができるようになる」というものと思われています。これは「よいこと」と思われがちです。しかし実際には、よいことばかりではありません。このように、加藤先生は、私たちのものの見方に揺さぶりをかけます。まずは、我々に違う見方を取り入れる前段が必要ということです。
第二次反抗期である思春期の思考は、物事を深く考えられるように変化していきます。そこで、それまでの「権威」よりも、自身の「論理」の影響力が強まるようになります。それまでは権威に適応していたところが、「それは正しく考えられていることなのか」と、考えが深められるようになることで、その適応を壊していくようになります。それが外側に向けば、反抗期という形であらわれ、内側に向けば、自尊感情の低下に向かいます。
これらをふまえると、思春期の問題行動の原因はなにか、ということについて、我々は、新たに捉えなおす必要があります。従来考えられてきた「不安定・不合理な思考が原因である」という見方から、「論理的・合理的な思考ができるようになることが原因である」という子どもの論理的思考の発達に則した見方へと、捉えなおすのです。
思春期には、子どもが「考えることを考えられる」ようになり、論理を持てるようになります。ただし、子どもはその独自の論理を語るとき、どうしても言葉が足りません。大人がよく耳を傾けてあげることが、思春期の子どもと関わるポイントです。
講義の最後では、「思春期になるとなぜ問題を起こせるのか」の答えとして、「子どもが論理的になるから、そして、大人が権威的になるから」とまとめられていました。子どもを変えるという考え方ではなく、大人を変えていくことが必要であるそうです。
講義はさまざまな分野にまたがっています。これまでの知識に、新たな見方をプラスできる体験です。みなさんも公開講義で北大の授業を感じてみませんか。
開催情報
公開講義(https://hokudaisai.com/event/event-itr/p-class.php)
開催場所
人文・社会科学総合教育研究棟W103共同講義室
「思春期になると、なぜ問題を起こせるようになるのだろう?」
教育学研究院 加藤 弘通先生
講義時間 6月8日(土)10:50~11:40
「世界のクマの調査研究と現状~ホッキョクグマとヒグマを例にして~」
獣医学研究院 野生動物学教室 坪田 敏夫先生
講義時間 6月8日(土)12:20~13:10
「水産学部(私)の研究紹介:イソギンチャクの社会関係、ヤドカリの闘争、ツブの産卵、イワナのあくび」
水産学部 海洋生物科学科 動物生態学研究室 和田 哲先生
講義時間 6月8日(土)14:50~15:40
「矯正歯科治療って何?」
歯学研究院 口腔医学部門 口腔機能学分野 佐藤 嘉晃先生
講義時間 6月8日(土)17:20~18:10
「AIの能力、限界、社会への潜在的な影響 ~専門家でも意見が分かれる人工知能の今~」
情報科学研究院 ジェプカ・ラファウ先生
講義時間 6月9日(日)9:20~10:10
「がんの治療法はどのように生まれてきたのだろう? ー過去から未来へー」
北海道大学遺伝子病制御研究所 園下 将大先生
講義時間 6月9日(日)10:50~11:40