ノーベル賞のパロディとして、年々注目度が高まってきているイグノーベル賞。「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられます。なんと今年は、農学研究院昆虫体系学研究室の吉澤和徳さん(准教授)がイグノーベル生物学賞を受賞しました。おめでとうございます!(Rodrigo L. Ferreiraさん、上村佳孝さん、Charles Lienhardさんとの共同受賞です)
受賞理由は「洞窟棲昆虫におけるメスの陰茎(ペニス)とオスの膣(ヴァギナ)の発見」。吉澤さんらは、チャタテムシの一属の交尾器がオスとメスで逆転していることを発見しました。
チャタテムシは、シラミに近い微小昆虫です。木の周りや岩の表面、はたまた人家にも、水の中以外はいたる所に見つけることができます。今回の主役はブラジルの洞窟に棲むトリカヘチャタテ(Neotrogia)属。体調3ミリほどのこの小さな昆虫は、メスがペニスの様な交尾器を持ち、オスに挿入することで交尾を行います。この時オスは、精子と栄養を含んだ精包をメスに受けわたすそう。この精包を巡って、メスが交尾に積極的になり、その結果、この不思議なメスペニスが発達したのではないか、と考えられています。ちなみに、交尾にかかる時間は、なんと平均50時間ほど!
姉弟が性別を入れ替えて宮中で暮らす様子を描いた、平安時代の古典「とりかへばや物語」。そこから名を受けた、このトリカヘチャタテの研究が進むことによって、性の違いが生じた進化の秘密を覗くことができるかもしれません。
イグノーベル賞では日本人研究者が常連で、2007年から11年連続での受賞となりました。そのうち2008年と2010年は、北海道大学電子科学研究所所長の中垣俊之さん(2010年当時は、はこだて未来大学在籍)が、粘菌の研究で受賞しています。今回の吉澤さんで北大は3回目の受賞です!今後もイグノーベル賞の取材を予定しています。みなさん、一緒に笑い、驚き、そして共に考えさせられましょう!
今回受賞したのは以下の論文です
今回の共同受賞者、上村佳孝さん(慶應義塾大学 准教授)の著書『昆虫の交尾は味わい深い…。』(岩波科学ライブラリー2017)にも、トリカヘチャタテの解説が載っています。