北海道胆振東部地震が発生したまさにその時、北海道大学病院で当直をしていた医師がいました。今回、9月6日に当直医として地震を経験した、木村弘太郎さん(消化器外科II 医師)に取材を行い、当日の様子についてお話を伺いました。
地震発生時の動きを教えてください。
地震があったのは3時過ぎで、その30分ほど前に病棟の看護師に患者のことで呼ばれて起きていました。病棟業務が終わって、当直室に戻って、また寝ようかなと思って横になったあたりで地震がきました。
今までに体験したことのない激しい横揺れを感じました。ベッドから下りて立ち上がろうとしたのですが、立つのも難しい揺れでした。周囲の物が次々と落ちていく音が聞こえました。恐る恐る電気をつけて、当直室を出て、病棟に向かいました。ナースステーションの看護師は地震で驚いていましたが、私よりも冷静に病棟の安全を把握しようとしていました。私が着いた時には、特に重症の患者さんを中心に見回りを開始していました。
患者は思いのほか落ち着いていました。パニックになる患者がいるかと思ったのですが、意外と冷静でした。慌てて部屋を飛び出してくる人はおらず、大声で騒ぐ人もいませんでした。患者は自分たちの点滴用のスタンドを倒れないように抑えていてくれました。なので、スタンドが倒れるといった事故はなく、怪我をした方もいませんでした。
停電が起きた後、北大病院は自家発電に切り替わりました。その前後でなにか影響はありましたか。
一瞬真っ暗になって、数分たって自家発電に切り替わりました。人工呼吸器をつけるといった、電気が消えることで命に関わる患者がいなかったので、私も看護師も特別慌てることはありませんでした。
夜が明けた後はどのような状況でしたか。
朝6時の段階で、家族に連絡して安全を確認しました。災害対策チームの指示が朝8時の段階であったので、その後はそんなに戸惑うことなく、病棟の仕事をいつも通りやりました。普段と違っていたのは正規の外来を中止していたことです。薬を求める患者や受診予定だった患者が来る可能性があったので、外来に各科の医者が詰めて対応しました。私の所属している消化器外科IIでは当番を決めて、患者の対応をしていました。
9月6日を経験してみて、なにを感じましたか。
札幌市はあまり地震のない街です。そのため、備えを十分にしていなかった人たちが多かったのではないかと思います。一般論になってしまいますが、今回の地震が備えをするきっかけになるのではないでしょうか。病院としては、災害対策チームの村上壮一さんがいらっしゃったので、みんなが安心して各自の役割を果たせたと思います。
一方で、院外薬局が開いていなかったり、患者の食事が一部ダメになってしまったりといったことがあったので、今後はその対応を考える必要がありますね。