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#177 NO MILK NO LIFE!!(1)~北大牛乳の生産現場に行ってみた!~

私たちは牛乳が大好きな北海道大学の一年生です。今回私たちは北大で牛乳に関する研究をしている二人の研究者に取材をしました。前後編の記事を通して、牛乳研究だけではなく皆さんに研究者の研究への思いも紹介したいと思います。

まず私たちは、多くの乳牛が飼育されている牛舎に行って、飼育と牛乳の味・成分の関係について研究している三谷朋弘さん(北方生物圏フィールド科学センター准教授)に取材をしました。

【山本直輝・総合理系1年/曲山碧海・総合理系1年/豊田万紘・文学部1年】

(第一農場の北側、北16条西12丁目にある牛舎を訪問しました)
北大では昔から牛の研究をしていると思うのですが、この牛舎にはどれくらいの歴史があるのでしょうか?

モデルバーンって知ってるかな? そこが初代の牛舎で明治10年、1877年に建てられてます。そして二代目は北19条の北側に僕が学生の時に建ってました。それで16年前にできたのがこの牛舎です。だから研究の歴史は140年以上あるけど、この牛舎は比較的新しいですね。

長い歴史があるんですね。この牛舎では何頭の牛が飼育されていますか?

今飼ってる牛の頭数は子牛も合わせて約50頭。実際に搾乳しているのは20頭。北海道の酪農家の平均頭数は80頭を越えてるので、規模は小さいかな。実はここの牛は1889年にアメリカから連れてこられた5頭の牛たちの子孫なんだよね。何世代にも続いて血統が残っているところも魅力の一つです。

(こっちを見ている牛の番号は1279番。最初の5頭は1~5番。連綿と続く飼育の歴史を表しています)
牛をどのように育てているのでしょうか?

牛の育て方にはこだわっています。北大では牛を飼い始めた当初から農場の牧草を餌として与えています。また、当時から圃場で収穫したトウモロコシも実の部分を与えていました。40年くらい前からはトウモロコシの茎とか葉っぱとかも含め発酵させた飼料、サイレージを作っています。

今、日本の牛の飼い方は穀物主体になっているんだよね。牛は基本的には草を食べて生きていく草食動物なんだけど、僕らが食べるようなトウモロコシや大豆といった穀物を大分あげるようになっている。みんなは「ああこれ草を食べて育った牛の牛乳だな」って思って飲んでるかもしれないけど、実は餌には穀物もたくさん含まれているんだよね。そしてその穀物は輸入が中心。

その結果、輸入飼料ばっかりで牛を育てているのに「国産牛乳です」みたいな何言ってるかよくわかんない状況になっている(笑)。このことを僕はあんまりいいことではないと思っています。だから北大では自分の所で取れたものを餌として与えています。

(北大の牛は一頭で1日30kgほどの牛乳を出します)
まさに北大産の牛乳をつくっているというわけですね。ここでは牛たちを放牧して育てていますが、そのメリットは?

放牧はずっと牛舎に入れて育てるより楽だし、お金もかからない。牛は牧草地でたくさん糞をするけど、コガネムシの仲間やハエがそれを細かくして、さらにそれを土壌中の微生物が分解してくれる。だから結構な早さで分解される。分解されたものを栄養として牧草が成長する。そしてそれを牛たちが食べて牛乳だして糞をして、また草が伸びる…というサイクルが生まれる。それをわざわざ人の手を加えなくてもできるのが、放牧のいいところかなと思ってます。

実は、放牧を始めたきっかけは先代の近藤誠司先生の時にとてもお金がなかったからだと聞いてます(笑)。

(8ヘクタールの放牧地。時間をかけて土をつくったり、草が生えすぎないように適切なタイミングで放牧したり、多くの技術が必要とのことでした)
牛乳の味は季節によって変わるのですか?

みんなあまり気づいてないかもしれないけど、牛乳って牛の飼い方によって味だったり香りだったり、すごい変わるんですよ。夏場だと牛は20時間以上、放牧地で草を食べているんですよね。だけど冬場は当然、雪だらけなので牛舎の中で飼わなきゃいけない。餌も大学内で作るトウモロコシや干し草にごろっと変えるんです。

そうしたら牛乳の味もごろっと変わります。夏の牛乳の方が薄くて、冬の牛乳の方が濃いんです。今の北大農場の牛はほとんど青い草しか食べていないので、草由来の風味が口の中に広がる牛乳になってます。夏は暑いのもあって成分が落ちてきて、すっきりしてくる。普段飲んでいる牛乳とは全く味が違うと思います。冬は、結構コクがあって香りとしてはちょっと甘いです。実際に成分も濃い。まあ、あんまりわかんないと思いますけど(笑)

牛と触れ合えるよさ、北大でできる研究の良さってなんでしょう?

牛と関わるのは、面白いですよ。僕は面白い事しかしたくない。何でこんな風に食べてるのかな、何で食べないんだろうな、何でこんなにお乳出るのかな、何で出ないんだろうなとか、考えてると面白い。自分の知識とすり合わせて、こういうことだなって納得したり。わからなければ次の研究テーマにしたり。

だから、牛を見ないで研究を始めるのは僕のスタンスとしては無理ですね。やっぱりいろんな現場の酪農家に行って、いろんな牛乳もらったりとか、いろんな話聞いて刺激を受けないと新しい研究は思いつかない。そういう意味では牛を実際に見られる研究環境は非常に重要です。

今北大では20頭ぐらいの乳牛を使って実験していますが、そういうことができる大学は日本では片手であるかどうかですね。うちぐらい自由にやっている所は多分ない。そういう意味では、もう最後の砦かなと思っていて、明治時代からずっと続けてきているんだし、やっぱり使命感みたいな部分も半分あります。

どんな牛乳を目指していますか?

「牛乳は健康に良いから飲む」みたいな感じで、今まで自分好みの牛乳を選べる市場をつくってこなかったんです。ビールやワインだと自分の好みで選ぶことができるのに、牛乳はメーカーに関しては色々あるけど、製造方法が一緒で中身もほとんど一緒。これでは面白くない。その時の自分の懐事情と気分によって商品を選ぶことが牛乳ではまだできてない。できないんじゃないかなという気もするけど、僕はそういう牛乳を目指すことも面白くて重要かなと思う。

酪農の魅力を体感したあと、北大牛乳をいざ、試飲

私たち取材班は、牛舎で搾乳した牛乳を実際に飲ませて頂きました。見た目は普段飲んでいる牛乳よりも黄色っぽい牛乳です。これは、餌である草の成分のβカロテンが含まれているからだそうです。想像していたこってりした味とはまた違って、飲みやすくコクがありました。三谷さんが言ったように、飲み終えた後に草の風味が少し口に広がる感じがしました。普段スーパーで買って飲む牛乳とは違い、牛舎で牛乳が搾られる過程や、放牧地を実際に見て、その場でいただく牛乳の味は格別でした。

三谷さんは、やみくもに機械による自動化を導入してそれに依存するのではなく、放牧酪農や人間が牛たちと直接ふれ合うことを大事にし、そこに酪農の意義、そして未来があるのではないかと考えています。私たちも実際に三谷先生に取材をして、現場で研究することの良さ、酪農の魅力を肌で感じることができました。

次回は細胞の世界からの牛乳研究を紹介

三谷さんは北大の他の研究者と共同研究することもあります。乳牛をつくる細胞に着目して研究をしている小林謙さん(農学研究院 准教授)もその一人。次回は、ミクロな視点から牛乳研究の一面をお伝えします。

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2021.09.06

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