新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、世界規模で自粛が続いています。北海道では2020年2月28日には道独自の緊急事態宣言が発令され、再び先週4月16日には全国規模の緊急事態宣言が発令、北海道は特定警戒地域と指定されました。そんな中、観光都市である札幌市内では、多くの飲食店が経営的に困難な状態に陥っています。
札幌市内の飲食店が行うテイクアウトとデリバリー情報を発信
元北海道大学職員の佐々木学さん(2005年入社)は、仲間と共に、飲食店のテイクアウト、デリバリー情報をまとめたウェブサイト「がんばれ飲食店!テイクアウト&デリバリー緊急対応店」を作成し、発信しています。さて、どのような経緯でこの活動は始まったのでしょうか?
元々、札幌市のお店を中心に紹介しているグルメ雑誌「poroco(ポロコ)」編集長の福崎里美さんに、飲食店から窮状を訴える声が寄せられたことがきっかけで始まったこの取り組み。福崎さんの夫の鶴島暁さん(北大理学部/文学研究科OB)を中心に、北大工学部4年の宮川寛希さん、北海道情報大学の学生数名が運営に携わっています。ウェブサイト制作のノウハウを持つ佐々木さんは、サイトのデザインや機能面で協力することとなりました。
(手前左から情報大学生2名、宮川くん。 奥左から福崎さん、鶴島さん、佐々木さん)
3月1日から立ち上がった本サイトは、今や400店を超えるお店が掲載されており、これまでに延べ100万ページ以上閲覧されています。本サイトの関連企画である「がんばれ飲食店!応援チャンネル」ではYouTube上で料理の内容を動画で詳しく見ることができます。自粛期間が長引く中、家の中でも飲食店の味が楽しむことができれば、気分転換になるかもしれません。
この取り組みは現在、すべてボランティアとして行われています。しかし他の地域に例があるように、より効果的な支援策として自治体や公的機関による補助などが求められている、と佐々木さんは語ります。
北大で学んだ発信することの楽しさ
佐々木さん自身、今回の活動はボランティアでかかわっています。佐々木さんは北大に就職する前、広告制作会社で紙媒体やイベントの企画、制作進行を担当しており、その経験が今回も活かされています。また、今回の活動に通じる、他者に何かを伝える楽しさを味わえた北大職員時代の思い出を語ってくれました。
「北大職員になって最初の仕事が『梨を売れ!』だったんですよ。配属された農学部内で、北大が栽培している千両梨(せんりょうなし)を売るんですが、千両梨は食べごろの見極めが難しいため敬遠されがちでした。そこで、農学部内のメーリングリストに、シャキッとした食感、といった表現を使用して宣伝したところ、反響があってたくさん買ってもらえたんです。それから2年半、いろいろ売りました(笑)。楽しかったですね」
その後、職員として働きながら、科学技術コミュニケーター養成プログラム(CoSTEP)にも参加して、発信する手法やネットワークを広げていった佐々木さん。CoSTEP同期受講生からの紹介が縁となって、現在は「北海道食べる通信」という食材付き情報誌の副編集長も務めており、生産現場のことを伝えるうえで、北大で学んだ科学技術コミュニケーションの知識も役立っているそうです。
北大を外から支える立場に
2020年3月末で北大を退職した佐々木さんは、広報プランニング事業の立ち上げを準備しています。
北大が好きでこだわり続けたいと語る佐々木さんですが、職員であり続ける限り、自身の部署の中での活動に限定されるため、外に出ればもっと北大の色々なセクションに関われるはず、と考えたことも、辞職を決めた理由のひとつだと言います。
また、佐々木さんには、新型コロナウイルス収束を待ってスタートしたいプロジェクトがあります。
「何でも美味しいと言われる北海道ですが、何が美味しいのか、道民こそがよく分かっていなんです。だから、北海道の食材の魅力を体験できる場を作りたい。学生が気軽に通える食堂のような場所を計画しています。そして夜はパーティ。志を共にする仲間と共有できるシェアキッチンとして運用したいと考えています。」
道産食材の魅力発信や食文化の発展を目指して、佐々木さんの挑戦は続きます。