タンパク質同士の電子伝達の仕組みを研究している今井瑞依さん(総合化学院構造化学研究室 博士課程3年)に、北海道登別明日中等教育学校4回生の2人がお話を聞き、レポートにまとめました。
(左から今井瑞依さん、永野慎太郎さん、齊藤生将さん)
タンパク質とはどんな物質ですか
タンパク質は人体の15%を占め、水についで多い物質です。爪や髪の毛をつくったり、筋肉を収縮させたり、呼吸に関わったりと、体の中で多種多様な活躍をしています。生きていくために必要な栄養で、小腸から吸収されて、私たちの体の中で生命活動の源となります。
大きさはどのくらいですか
タンパク質の大きさは、10億分の1mほどです。例えば、ひとつの細胞を拡大して、北海道大学の札幌キャンパス(南北約2km)に見立ててみると、タンパク質は、人間の大きさ(2m)程度です。光学顕微鏡で観察できる大きさは、せいぜい500万分の1m。なので、それより小さいタンパク質は、直接観察することはできません。
(研究内容を紹介する今井さん)
どのように観察するのですか
目に見えないタンパク質は、磁気共鳴法(Nuclear Magnetic Resonance 以下NMRと略)を用いて観察します。これはタンパク質の原子が磁性を持つという性質を利用して、構造を立体的に解析する方法です。NMR装置は、強力な磁力を発生するため、ほかの機器に影響を及ぼさないよう特別な部屋にあります。
(金属製の頑丈な扉で隔てられたNMR実験室を見学)
このNMR装置にタンパク質の溶液をセットし、電磁波を当ててタンパク質の三次元構造を観察しています。今井さんが注目しているのは、細胞のエネルギー生産工場といわれるミトコンドリアにあるタンパク質、シトクロムcとシトクロムc酸化酵素です。これらのタンパク質同士が、どのように出会って電子を渡しているのか、どのように電子を受け渡してエネルギーを作るか、その仕組みについて研究しています。
(シトクロムcがシトクロムc酸化酵素へ電子を伝達する)
研究室訪問を終えて
大学の研究室というと、黙々と研究だけをやっているというイメージを持っていました。けれども、今回見学した今井さんの研究室には、のびのびしていて和気あいあいとした雰囲気がありました。
このように魅力あふれる研究室のある北海道大学ですが、その環境とはどのようなものか、今井さんのお話の中で印象に残ったことがあります。
総合大学ならではの交流
たくさんの学部が、文系理系隔てなく一つのキャンパスに集中しています。いろいろな専門や違う考えを持った人たちがたくさん集まっているので、話を聞きに行きたいと思えばすぐにコンタクトをとれます。一つの面だけからではなく多面的に物事を考えられる環境は良い点だと思います。
自然あふれるキャンパス
私たちが北海道大学の構内に入ったときから、自然が豊かで落ち着いた雰囲気を感じました。今井さんも「自然が多いということが北海道大学の魅力の一つです」と教えてくれました。
(キャンパスの紅葉)
偉大な先輩たち
ノーベル賞を受賞された鈴木章先生や宇宙飛行士の毛利守さんをはじめ、自分たちの目標になる存在が身近にいるということは励みになると思います。
(今井さんの宝物、鈴木章先生のサイン色紙)
私たちが今できること
教授の石森浩一郎さんはとても気さくな方で、「高校時代になにかひとつでも打ち込めること見つけよう」とアドバイスしてくださいました。今井さんも、高校時代は部活のバドミントンに打ち込んでいたそうです。一つのことに打ち込むことは大切なことなのだと思います。私たちも、学校生活で部活や勉強に打ち込んでいきたいです。
(教授の石森浩一郎さんにもお話を聞きました)
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この記事は、北海道登別明日中等教育学校のインターンシップにCoSTEPが協力して実施した成果の一部です。
【取材:齊藤生将、永野慎太郎(北海道登別明日中等教育学校4回生)+CoSTEP、レポート指導:田中泰生(CoSTEP10期ライティング・編集実習)】