川を上るサケ、それを捕まえるヒグマ。北海道北東部・知床半島の大自然を象徴するこの光景は、生態系の維持に必要不可欠な、海と陸との繋がりを表しています。ヒグマがサケを食べると、海の栄養が糞の形で森へと運ばれ、栄養豊富な土壌が新たな命を育んでいく。このような海と陸との繋がりによって、知床の豊かな自然が保たれてきました。
しかし2012年、ガリガリに痩せたヒグマや餓死した子グマが多数確認される事態が発生しました。夏の食べ物が少なかったことが原因と考えられますが、詳しいことはわかっていません。このような事態が続けば、ヒグマの個体数が減るだけでなく、海と陸の繋がりが妨げられ、知床半島全体の生態系が衰退する恐れがあります。そこで白根ゆりさん(獣医学院 博士1年)は、どの食べ物がヒグマの生存や繁殖を左右するのかを明らかにしたいと考え、研究を始めました。
ヒグマはサケだけではなく、ドングリやブドウ、マツボックリなど、色々なものを食べています。その中でも何が重要な食べ物なのかが分かれば、各年の木の実の実り具合等によって、ヒグマが繁殖に成功し、生き残ることができるかを予測できます。ヒグマの生存を左右する要因を知ることは、ヒグマをどのように保護管理していくかを考えるうえで、非常に重要です。
また、生存や繁殖に影響する食べ物が不足していると、ヒグマは食べ物を求めて人里に近づく恐れがあります。ヒグマにとって重要な食べ物が何なのかを特定することで、どの食べ物が不足すると出没しやすくなるのか、という出没メカニズムの一端を明らかにすることができます。この研究を行うことによって、生態学的な知識が得られるだけでなく、社会的な問題の解決にも貢献することができるのです。
たくさんの可能性を秘めた研究、ぜひ動画で御覧ください。
動画を見る→http://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/cs/video/2017self2/shirane/
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この映像は、白根ゆりさん(獣医学院 博士1年)が、大学院共通授業科目「大学院生のためのセルフプロモーション2」の履修を通して制作したものです。
白根さんの所属研究室はこちら
野生動物学教室(坪田敏男 教授)