自然エネルギーを使って、チコリーやアスパラガスを周年栽培する研究を進めている、荒木肇さん(北方生物圏フィールド科学センター 教授)の推薦図書「豊かな石油時代が終る 人類は何処へいくのか」(日本工学アカデミー環境フォーラム 編/丸善出版/2004)を読み、インタビューしました。本書は、荒木さんが現在の研究を考えるきっかけとなった本です。
【樫原 葵・文学部1年/亀割由奈・医学部1年/木村礼音・総合教育学部1年】
荒木さんが自然エネルギーに注目した理由を教えていただけますか。
- やはり、この本を読んでからですね。これは、当時の農学部長から推薦していただいた本なんですが、いわゆる石油問題や自然エネルギー活用について書かれています。これらを目の当たりにして、エネルギーについて考えなければならないと思いました。
あと、3.11が大きいです。あれ以降、自分たちの生活や資源を見直すことが必要だと思いました。原発問題の根本は、人間が制御できないことですね。発電はしているが、その後のものに対して人間は火をつけたけれど消火できないわけです。それが放射性廃棄物です。それを人間は処理できないのです。そんなものを作って社会に出してしまうのは、人間のあるべき姿としてどうでしょう。無責任というか不安というか…。私が担当している学部一年生向けの授業で、こういう意見がよく出ます。
「将来は解決できるだろう。」
「今、安全なら良い。」
いわゆる不可知論といいますが、これらはサイエンスとしては取るべき立場ではありません。実験はいいんです。例えば、放射性廃棄物をどのようにしたら安全に処理できるかを研究することは絶対に必要です。こういったことを通して、自然エネルギーについて考えるようになりました。私の専門分野は農学の中でも施設園芸的なことをやっているからかもしれませんが、ハウスは比較的制御しやすいものだと考えています。
エネルギー問題を解決するために「人類は減らすべき」と、本の中に書いてありました。それについて荒木さんはどう思われますか。
- いや、私はそうは思いません。人はパワーだと思っていて、昨今の高齢化社会では人が人を助けることが非常に大切になってくると思います。私が子供の頃は、一家族6~7人の兄弟がいました。ですから親戚も多く、手助けしてくれる人が多いんですね。私の父はもう88歳にもなりますが、病院に行くだけでも複数人の手助けが必要になってきます。
(推薦図書「豊かな石油時代が終わる 人類は何処へいくのか」)
自然エネルギーは原子力発電などの代替になっていくのでしょうか。
- 自然エネルギーはいろいろな使い方があると思います。私の考えでは規模がまだまだ小さくて、例えば家の中でどう使えばよいかはいろんな発想が出てくるのですが、社会全体の電気を賄っていくにはどうすればいいのか、私の研究資料ではまだ足りません。
話は変わりますが、ドイツではソーラーパネルや風車がいたるところにあります。ただこれを日本でやろうとは思いません。日本には温泉があり、その熱を利用して農業を行うことができます。その国の特徴を生かしたエネルギー開発を行うことが大切だと思います。
これからの展望を教えてください。
実は私、来年に北海道大学を退職する予定です。それまで、博士課程の学生を指導していくのですが、学生には何が現在あるべき姿なのかを常に追い求めて、それを発信することを大切にしてほしいと思っています。社会はすぐには変わりませんが、物事をきちんとアピールし続けると、だんだん変わっていく。社会ってこうなんだよ、会社ってこうなんだよ、というふうにいわれることもありますが、学生はもっと主張していかなければなりません。正義感を追い求めて、自分の芯を貫くべきです。
“Be Human !” ーーー人間であれ!
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この記事は、樫原 葵さん(文学部1年)、亀割由奈さん(医学部1年)、木村礼音さん(総合教育学部1年)が、全学教育科目「北海道大学の”今”を知る」の履修を通して制作した成果物です。