今年の北海道新聞文化賞の科学部門に、本学の豊嶋崇徳さん(医学研究院 教授)が選ばれました。発表は10月25日、受賞理由は「新型コロナウイルスの唾液による検査法を確立」です。従来、ウイルスの検査には鼻咽頭と呼ばれる鼻の奥に長い綿棒を入れ、その場所の体液をぬぐって用いていました。新型コロナウイルスの流行当初の検査も同様です。しかし、この方法には採取をする医療従事者が感染するリスクや、検査時の様々な手間、コストなどがありました。
一方、豊嶋さんらの方法では、検査を受ける人自身が唾液を容器に出して採取することもできます。これまで、このような方法はウイルスを適切に検出できないと考えられてきました。しかし、豊嶋さんらは、新型コロナウイルスは口の中の細胞に多く感染することから、唾液を用いた検査でも高い精度で検査できると考えました。そして実際、2020年4月から5月まで北海道大学病院で採取したサンプルを用いた比較調査では、従来の方法と同じ精度の結果が得られました。
他の研究機関の研究結果も合わせてこの方法は認可され、2020年6月から全国の保健所で使用されています。流行下での大量かつ迅速な検査を可能にしたという点で、その貢献はきわめて大きいといえるでしょう。豊嶋さんらはその後、2,000名のサンプルを用いたより厳密な比較調査も行い、結果は2020年9月に学術誌Clinical Infectious Diseasesに掲載されています。
北海道新聞文化賞は道内の社会、学術、経済に貢献した方を表彰する賞で、今年は豊嶋さんの他に、北大OBの横山清さん(株式会社アークス 社長)が経済部門で、小林博北大名誉教授が社会部門で受賞しています。1947年から続くこの賞は時事に結びついた選考が特徴で、例えば2000年に有珠山が噴火した際には、その予測と減災に貢献した岡田弘北大名誉教授がその年に受賞しています。一方、鈴木章名誉教授の受賞は2009年とノーベル賞受賞に1年先んじています。いいね!Hokudaiには受賞者のうち以下8名の方々が登場しています。
写真はいいね!Hokudaiにも登場している受賞者。下記の氏名等は写真上段左から右の順。括弧内は現在の所属・職位です。
- 第71回(2017年)小林快次さん(総合博物館 教授):「むかわ竜」の化石発掘など国内外の恐竜研究に貢献
- 第67回(2013年)菊地勝弘さん(名誉教授):雪の結晶の新しい分類など気象学や雪氷学で功績
- 第64回(2010年)圦本尚義さん(理学研究院 教授):同位体顕微鏡で太陽系生成論研究
- 第63回(2009年)鈴木章さん(名誉教授):有機合成反応の研究で世界的評価
- 第62回(2008年)西村紳一郎さん(先端生命科学研究院 教授):糖鎖の構造解析技術開発
- 第61回(2007年)藤田正一さん(名誉教授):環境汚染物質が生態系に及ぼす影響評価の研究
- 第58回(2004年)喜田宏さん(獣医学研究院 教授):鳥・動物とヒトインフルエンザウイルスの生態学的研究
- 第46回(1992年)毛利衛さん:日本人初の科学宇宙飛行士として宇宙開発と科学技術の発展に貢献