今月のいいね!Hokudaiでは、リスト・ベンジャミンさんの2021年ノーベル化学賞受賞を記念した記事を多くお届けしてきました。発表翌日の記者会見やお祝いの場の様子、博物館でのパネル設置、受賞内容の詳細などです。日頃から北大で過ごしている学生や研究者は、今回の件についてどのような感想を持ったのでしょうか。ICReDD内外の方々にインタビューしてみました。
【梶井宏樹・CoSTEP博士研究員】
まずは、ICReDDに15ある研究グループのひとつ、猪熊グループで研究している学生に今回の件について聞いてみました。
眞部さん:「研究室で作業をしていたら、突然、上の階から『わー!!』という歓声が上がって。なんだろうなと思っていたら、どうも『リスト先生が受賞されたらしいよ』と。自分の専門の有機化学分野での受賞であったこともあり、すごく嬉しかったです。また、私自身、ICReDDで研究をするようになってから、いろいろなグループの先生や学生と研究について話す機会がすごく増えました。リスト先生の受賞をきっかけにICReDDが注目されているので、もっといろいろな人が来て、ますますそういうアクティブな研究の雰囲気が生まれれば良いなと思います。」
眞部さんの話からは、今回の受賞が他のグループにとっても喜ばしいことで、研究のモチベーションにもつながるようなものであったことを感じました。分野融合を目指すICReDDの取り組みが加速されるような素晴らしいきっかけになると良いですね。
ICReDDの外の学生はどのように感じているのでしょうか。3人の学生からは、北大生ならではのエピソードを聞くことができました。
逢坂さん:「私にとってノーベル賞は、教科書やニュースで見るような自分からは遠い話題でした。けど、北大に入学してからは触れる機会が増えました。『これだけは北大生として説明できるようにした方が良いよ』と、鈴木章先生の研究内容について学部1年生の化学実験で習ったり。私の専門とは異なる分野なので積極的に調べるといったことはしませんでしたが、こうして身近なところでノーベル賞受賞者が出ると、ちょっと嬉しいです。前向きな気持ちになれます。」
小林さん:「私も、学部1年生の実験はとても印象に残っています。また、私はもともと化学科出身なので、リスト先生だけでなく、ICReDD 拠点長の前田理先生に目がいってしまいました。ずっと北大にいると、北大の先生に対して『すごい』という実感が湧きにくくなってしまいますが、今回のような賞を北大関係者がもらったという事実を見ると、『あ、やっぱりすごい人たちが集まっているんだな』と改めて実感します。自分のモチベーションにできるようにがんばりたいなと感じるようなニュースでした。」
波田さん:「専門分野が近いこともあり、僕にとっては身近に感じるような受賞内容でした。受賞後は特に内容に詳しい先輩から話を聞いたりしました。リスト先生に関しても、特任教授ではありますが、ICReDDで研究している友人から話を聞いていたこともあり、結構身近に感じるような存在です。また、僕も学部時代に前田先生の授業を受けていました。ノーベル賞受賞者がいるような研究所のトップを、そういった先生が務めているということはすごいなと。これからICReDDがどんどん盛り上がっていくのかなと注目しています。」
ICReDDに所属していない北大生にとっても、どこか自分事として感じることができ、少し嬉しくなる、そんな受賞だったのかもしれません。また、北大を見つめ直すきっかけになっている点も面白いなと感じました。
最後は辻信弥さん。今はICReDDのリストグループの共同リーダーとしてご活躍中ですが、かつてはリストさんの研究室の学生でした。
辻さん:「リスト先生のご受賞は、家族のように嬉しいです。また、今回の受賞の鍵となるような研究をリスト先生が発見したのは、今の僕と同じくらいの年齢の時でした。そういった意味で、かなり触発されるといいますか、もっとがんばらなくてはいけないなと思います。この点に関しては、僕と同年代の研究者も同じように思ってるんだろうなと。30代の研究者というのは、ほんとうにいろいろな状況に置かれています。世の中を変えるような一流の研究を、自分と同じ年代でもしていた人がいるというのは、大きな励みで、夢が広がります。」
若くしてノーベル賞につながるほどの研究をしたリストさんの物語は、学生はもちろん、若手研究者にとってもやる気を起こさせるようなものようです。ご存命の方に贈られるという条件がノーベル賞にはありますが、ある種の伝記のような側面もあるのかもしれないですね。
まだまだ限られた方々としか話せていませんが、それでも、リストさんの受賞に対して抱いた希望や期待、北大で学んだからこそ生まれた感想など、興味深いお話ばかりでした。何よりも、「次につながっていく、大きなきっかけ」としてのノーベル賞の意義のようなものを筆者は感じました。読者のみなさんは、ノーベル賞に関してどのような想いや、北大時代の体験談などをお持ちですか? シェアいただける方はぜひ『いいね!Hokudai』にコメントをお寄せください。
授賞式はノーベルの命日である12月10日の開催、2021年のノーベルウィークは12月6日〜12日です。なお、今年は平和賞の受賞者のみ、対面でメダルや賞状を受け取る形がとられるようです1)。北大内でも興味深い話題を見つけ次第、引き続きみなさんにお届けしますね。
リンク
- ノーベル賞公式ウェブサイト(ノーベル財団), https://www.nobelprize.org/ceremonies/nobel-week-2021/ (2021年10月27日 閲覧).
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