ご参加、ありがとうございました。
想像力とは、現実には生じていない物事を思い浮かべる能力です。作品として表現する過程においても、科学的な探究においても、想像力を働かせることはとても重要です。今回のカフェでは、アートと科学哲学という分野で独自の視点で活動しているゲストと一緒に、アートと科学における想像力の関係性について話し合います。
アーティストの平川紀道さんは、もっとも原始的なテクノロジーとしての「計算」に注目しています。私たちの世界の裏側には無数のシステム、そしてそれを把握するための計算が動いています。しかしそれらの裏側の世界は通常表には出てきません。モエレ沼公園で展示した《datum》をはじめ、計算結果を通して世界を再構成していく彼のインスタレーション作品は、私たちに世界の裏側にある存在について想像させます。
もう一人のゲスト、ローマン・フリッグ(Roman Frigg) さんは、フィクション理論を唱える科学哲学者です。想像力は、科学的探究にとって不可欠であるだけではなく、科学という営みの中核にあるとフリッグさんは主張します。計算や実験よりも、想像力を用いたモデルの構築こそが、科学にとって本質的であるという考えは、近年、科学哲学の分野で注目されているものです。
また、フリッグさんと共同研究している松王政浩(北海道大学 理学研究院 教授)さんがコメンテーターとして登場します。平川さんとフリッグさんの視点について、想像力から作られるフィクションとリアルの見方について、コメントをいただきます。
想像力の働きは、各々の活動によって異なるのでしょうか。想像力が創り出す物語や、それを通して見る現実はどのように交差するのでしょう。今回のカフェでは、想像力について、それぞれの視点から想像していきます。
日時:2023年2月24日(金) 18:00~20:00
場所: 札幌市図書・情報館
ゲスト:Roman Frigg(London School of Economics and Politics)、平川 紀道 (アーティスト)
コメンテータ:松王 政浩(北海道大学 理学研究院 教授)
聞き手:朴 炫貞(北海道大学 CoSTEP 特任講師)
事前申し込み:不要、先着40名(当日youtube live配信あり)
参加費:無料、通訳/翻訳 和/英 順次通訳あり
主催:北海道大学CoSTEP、札幌市図書・情報館
協力:札幌国際芸術祭実行委員会/札幌市
*科研費基盤研究(B)20H01736「統計学的視点を加味した科学哲学による「科学的推論」教育プログラムの構築」(研究代表者:松王政浩)
ゲスト:ローマン・フリッグ
科学哲学者。研究対象は、一般科学哲学と物理学の哲学。科学的表象、モデリング、統計力学、ランダム性、カオス、気候変動、量子力学、複雑性、確率、科学的実在論、コンピューターシミュレーション、還元主義、確証に関する論文を発表しながら芸術と科学の関係について探求している。現在の研究は、科学モデルと理論の性質、統計力学の基礎、および不確実性の下での意思決定に焦点を置いている。
ゲスト:平川 紀道
1982年生まれ。もっとも原始的なテクノロジーとして計算に注目し、コンピュータプログラミングによる数理的処理そのものや、その結果を用いたインスタレーションを中心に、2005年から作品を発表。2016年、カブリ数物連携宇宙研究機構のレジデンスで作品「datum」シリーズの制作に着手、豊田市美術館、札幌国際芸術祭プレイベントなどで発表したのち、17年、チリの標高約5000mに位置するアルマ望遠鏡のレジデンスを経て、六本木クロッシング2019などで最新バージョンを発表。また池田亮司、三上晴子らの作品制作への参加、ARTSATプロジェクトのアーティスティックディレクション等も行う。2019年より札幌を拠点。
コメンテーター:松王 政浩
1964年大阪府に生まれる。1996年京都大学大学院文学研究科博士課程修了。静岡大学情報学部助教授などを経て、現職は北海道大学大学院理学研究院教授。博士(文学)。専門は科学哲学。主な著書に『科学哲学からのメッセージ:因果・実在・価値をめぐる科学との接点』(2020年、森北出版)、主な訳書にエリオット・ソーバー『科学と証拠―統計の哲学入門―』(2012年、名古屋大学出版会)、マイケル・ワイスバーグ『科学とモデル―シミュレーションの哲学入門―』(2017年、名古屋大学出版会)がある。
The 128th Science Cafe Sapporo
A Dialogue on Imagination from Art & Philosophy of Science
Imagination is the ability to imagine things that do not occur in reality. It is very important to use the imagination both in the process of expressing artworks and in scientific enquiry. In this science café, we will discuss the relationship between imagination in art and science with guests who have unique perspectives in the fields of art and philosophy of science.
Artist Norimichi Hirakawa focuses on ‘calculation’ as the most primitive technology. Behind our world there are countless systems, and calculations running to grasp those systems. However, the world behind, consisting of countless systems, is usually not visible. His installations, such as the 《datum》 exhibited in Moerenuma Park, in which he reconstructs the world through the results of calculations, make us imagine the existence behind the world.
Another guest, Dr. Roman Frigg, is a philosopher of science who advocates fiction theory. Imagination, Frigg argues, is not only essential to scientific enquiry, but is at the heart of the activity of science. The idea that imagining models, rather than calculating or experimenting, is essential to science is one that has received much attention in the field of philosophy of science in recent years.
Dr. Masahiro Matsuo (Professor, Faculty of Science, Hokkaido University), who has collaborated with Frigg, will also be a commentator. He will comment on the presentations by Hirakawa and Frigg. Does imagination differ in art and science? How do the stories created by the imagination relate to the reality seen through that imagination? In this science café, we will imagine the imagination from different perspectives.
24th feb (fri) 2023 18:00~20:00
Sapporo Municipal Library and Information Center