藤井光氏による2025年度北海道大学CoSTEP開講式特別講演「語りえぬものを語り継ぐ~アートで省みる科学技術コミュニケーション~」を5月10日(土)に開催します。
記憶は、ある人の体験と共に作られ、その人の中に息づいています。その記憶を記録として外在化するとき、語りえぬ感情や文脈をどこまですくい上げることができるでしょうか。
藤井光さんは、国内外で活躍する現代アーティストです。藤井さんの作品は、映像やインスタレーションを通じて、視覚や聴覚、身体感覚の境界を探り、現代社会における情報や記憶の扱いを問い直します。《第一の真実》(2018)という作品では、2700年前の遺跡から発見された大量の人骨を巡り、考古学者が科学的に解明する事実の限界を映像で記録し、事実の先の真実を想像し演劇で表現しました。福島第一原子力発電所の事故から生まれた《あかい線に分けられたクラス》(2021)では、小学校の校区を圏内と圏外に分けることで生じる差別を映像作品として表現しました。
《あかい線に分けられたクラス》から
《第一の事実》から
科学技術は私たちの生活を便利で豊かなものにする半面、様々な軋轢ももたらします。今年は原爆投下からちょうど80年目の節目の年です。世界で唯一の被爆国である日本は、2011年、再び福島原発の事故で広い地域が被曝しました。原子力の利用は私たちの生活、健康にたくさんの恩恵をもたらしましたが、便利で強大なエネルギーは時に悲劇や暴走を引き起こします。科学技術コミュニケーションは、科学がもたらす利点を伝えるとともに、科学が引き起こす負の側面を省みて、科学がより安全で健全に運用されるような仕組みを考える場も創造します。その際には、記録の先にある記憶を想像し、語り合う必要があります。
開講特別講演では、藤井さんのこれまでの作品を通して、当事者と当事者でない人々が分かち合うためには、事実を超えて伝えうるものとは、について考えていきます。私たちは語られた記録と語りえなかった記憶をどう未来に残すことができるのでしょう。CoSTEPの開講式は、振り返ることから始まります。
日 時:2024年5月10日(土曜日)13:30-16:00(開場13:00)
*時間は変更になる可能性があります。
場 所:北海道大学フロンティア応用科学研究棟2Fレクチャーホール(鈴木章ホール)
北海道札幌市北区北15条西8丁目
講 師:藤井光さん (現代アーティスト、東京藝術大学 准教授)
参加費:無料
定 員:150名(本プログラムは2024年度CoSTEP開講式の特別講演として開催しますが、一部、一般の方にも公開いたします。)
藤井光(ふじい・ひかる)さん
2004年パリ第8大学美学・芸術DEA課程修了。社会の出来事や歴史をリサーチし、今日の社会問題に応答する作品を制作している。広く国内外で展示活動を行っており、東京都現代美術館や韓国の国立現代美術館にも作品が収集されている。2020年「Tokyo Contemporary Art Award 2020–2022」を受賞。
主催
北海道大学CoSTEP
共催
北海道大学Ph.Discover、北海道大学リカレント教育推進部