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クロスカップリング反応を簡単なアニメーションにしました。

2010.11.10

鈴木-宮浦クロスカップリングとはどのような反応なのか,簡単なアニメーションを制作しました。

ベンゼン環の記号や複雑な化学式を見たり,長くて発音するのも難しい有機化合物の名前を聞いたりすると「化学はちょっと苦手だな…」と感じてしまう方も多いのではないでしょうか。

そこで,触媒となるパラジウムを“カニ”に例えて,科学的な(最低限の)正確さを損なうことなく,それでいてわかりやすく楽しんで見てもらえるアニメーションを制作しました。

きっかけは,鈴木章先生の共同研究者である宮浦憲夫先生(北海道大学特任教授)の一言でした。「テレビなどで報道されているクロスカップリングの説明には,ちょっと違和感があるんですよね。パラジウムが強力な接着剤となって炭素と炭素をくっつけているという解説もありましたが,そうではないんです。」そしてにっこり笑いながら,「2本の大きなツメをもった“カニ”で説明してみませんか?」

パラジウム触媒は炭素と炭素を結合させる仲立ちをするだけで,反応後の物質には残りません。結合が完成すると,もとのパラジウムに戻ってまた反応を繰り返していきます。

その様子を,カニのツメを使って表現していくのですが,科学的な厳密さを求めようとすると,どんどん複雑になっていきます。

カニのツメがベンゼン環と臭素をつなぐ部分をキャッチして,切り離し,もう一方のベンゼン環と結合させる,その位置やタイミングなど節目節目の動作をしっかりと確認しながら制作を進めていきました。

宮浦先生との打ち合わせにはグラフィックデザインを学んでいる受講生も同席しました。「実写ではなく,イラストやアニメーションにして説明した方がわかりやすい場面があるんですね。イラストにすることで可能になる“省略”や“誇張させた表現”に大事なカギがあることを知りました。」初めての制作現場で貴重な体験をしたようです。

CoSTEPで制作したスケッチをアニメーションに起こす作業は,プリプレス・センターに協力していただきました。制作責任者の湯田善樹さん。「ノーベル賞という歴史に残る偉業を記録するお手伝いができたことはたいへん光栄です。CoSTEPのみなさんがコミュニケーターとして,専門的な内容を翻訳してくれたおかげで,僕も理解できるアニメーションが完成した思います。」とうれしいコメントをいただきました。

そして監修をしてくださった宮浦先生。初めは慎重にパラジウム触媒のサイクルを説明して下さっていたのですが,次第にスタッフもおどろくびっくり発言が飛び出しました。「カニがビーカーを突き破ってマジックのように登場するシーンを入れましょうか」とか「カニがパン食い競争のように,ベンゼン環をつかもうとしてつかみ損ねて失敗するシーンも入れてみましょうか?」残念ながら作業時間との兼ね合いで今回は実現しませんでしたが,こんな遊び心や洒落心があってこそ,科学技術コミュニケーターにとって大切な“伝えるパワー”が生まれるのかもしれません。宮浦先生,ありがとうございました。

iPhone、iPadの方は、こちらから映像をご覧いただけます。

制作にあたって,株式会社プリプレス・センターに協力をいただきました。この場をかりて感謝いたします。