『研究』というものを始めてみると、自分が使える知識のあまりの少なさに愕然とします。「知っている」知識を「使える」知識にするためには、まず自分が「やってみる」ことが必要です。「自分の体験」から得たものは必ず他でも生きてきます。
CoSTEP では、選科生ということもあってか、自分からものすごくかけ離れた「体験」を持っている人がたくさん集まりました。普段e-learningで学び、直に接触できたのは最初の講義と夏の集中演習くらいでしたが、そのモチベーションの高さとエネルギーに圧倒されました。目的のある自発的な学習というのはなんて素晴らしいのだろう。
一見、インターネットを通じた受講だけで物足りないような気がしますが、「やってみる」チャンスはポロポロ降ってきます。札幌で行われた国際顕微鏡学会議サイエンスカフェのお手伝いや、手稲高校でのプロジェクトに加わって行った自らの講演を通じて、単なる「知識」でなく「ストーリー」を話す側の気持ちが少し分かりました。話す側の気持ちが分かれば聞く側に回った時の聞き方が確実に変わります。どこに話し手の体験があって何がわかったのか、などなど。
『研究』とは、「自分の体験」を通じて新しい知識を生み出していくことです。自分にとってのヒントを得るために「相手の体験・体験の仕方」を引っ張り出す、または自分の主張を展開するために「自分の体験」を分かりやすく伝えるなど、サイエンスコミュニケーションが研究者にとって役立つ場面も山ほどあるなというのが、一年間「やってみた」感想です。
- 選科生修了 石岡準也
- 北大大学院工学研究科修士課程