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井戸を出て大海を垣間見た一年

2015.4.18

昨年のこの時期、CoSTEPの募集案内をどこかで見かけた後、元受講生の先輩に尋ねてみました。

「CoSTEPってどんなところですか?」

「本科、楽しいよ」

「じゃあ入ります」

そんな軽いノリで本科の受講を決めたわけですが、結果的に一年間では消化できない量の貴重な経験をさせていただきました。試練もありましたが、総じて楽しかったです。

具体的な体験を紹介しましょう。私が受講した実習は、2つ。本科のグラフィックデザイン実習(以下デザイン実習)と、選択実習のリスクコミュニケーション実習(以下リスコミ実習)です。

デザイン実習でやったことを挙げると、サイエンスカフェのポスター制作、ワークショップの企画、ジンパや懇親会の準備、などなど。「あれ、デザインってなんだっけ?」と時々振り返りつつも、毎週様々な作業をしました。メインの活動は、子供向けのワークショップ企画。先生からの細かい指示はなく、イベントの企画経験がない5人の大学院生に、企画のほとんどが委ねられました。無茶振りです。それでも、5ヶ月間の準備で何とか成功と呼べる仕上がりになりました。詳しい活動内容は、活動報告のページ(おしえて!マトリョーシカおしえて!マトリョーシカ2)をご覧ください。私にとって、老若男女に展示品を解説することも、子供たちの前で授業をすることも初めての経験。どの程度人々の興味を引き出せたかは今でも分かりませんが、どうすれば興味を持ってくれるかを考えるきっかけにはなりました。

リスコミ実習では、サイエンスカフェとその関連イベントを企画しました。テーマは「福島の食品の放射能リスクをどう捉えるか」。難しいテーマでしたが、様々な角度から問題を見つめるために、資料を集め、現地へ取材に行き、時にはユーモアを交えつつ、真面目な議論を交わしました。企画から本番まで半年あまり。本番に近づくにつれ、平日夕方からの議論が日付をまたぐことは当たり前になり、いつしか「ブラック実習」などと囁かれるようになりました。私もプレゼンターやグループファシリテーターに駆り出され、「ブラック」の名に違わぬプレッシャーを体験。しかし、福島の知識、リスクコミュニケーションによる物の捉え方、議論の進め方など、負担に見合うだけの学びも得られました。

さて、CoSTEPはいわば学びのよろず屋です。井の中の蛙だった私も、井戸から引っ張り出され、様々な科学技術コミュニケーションの世界を知るところとなりました。CoSTEPは一つの道を究めんとする人には物足りないかもしれません。逆に、何でも学んでやるぜ、という雑食系の人は、ここで大きな収穫を得られる可能性があります。私のように、何となく面白いことを学びたいなあ、という理由でもいいのです。とりあえず入ってしまえば、個性際立つ先生方が、力強く背中を押してくれるはずです。

北海道大学大学院 生命科学院生命科学専攻 修士課程

渡邉綱介