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選科A活動報告「やっぱり、うなぎがいいですか?食生活から見えてくる科学技術〜」

2017.10.23

選科A 2班 うー、なんぎ!チーム

天野麻友美 浅野希梨 石川公広 漆山明日美 平山実季

日本の食生活は、遺伝子組み換えや品種改良のような食の科学技術によって豊かな食選択ができるようになった一方で、食に関わる科学技術に対して正しい知識を持つ機会を持たず、科学技術を拒否したり、無意識的に食を選択したりする消費者や、消費者の認識やニーズを推し量る機会が少なく、技術開発を先攻させて研究する専門家によってお互いの認識がずれたまま、食の技術開発が進んでいる現状です。

このような“認識のズレ“を解決するためには、研究開発する側と消費者側が互いに食に関する科学技術に対して持つ意識を共有する機会が必要だと考えました。

そこで、普段「何を食べるか」を自分で選択できる人が、科学技術を知ることで食べ物を選ぶときの判断材料を増やし選択肢を考え、最終的に自身が考える食と科学技術に対して再認識する機会を作ることを目標とし、参加者に対して科学技術を知る前と知った後で食の選択肢について再認識を促す参加型のサイエンス・カフェを実施しました。

多くの消費者が、科学技術による研究が行われている認識をあまり持っていない「うなぎ」を例として、食を取り巻く科学研究について知ってもらおうと考えました。来場者(=消費者)の食材購入における選択肢を想定し、これを導入として、うなぎの現状を知ってもらい、それを取り巻く科学技術や研究開発の背景を提示することで、来場者(=消費者)が食に対しての選択に関わる科学技術の意識を再認識することを目的としました。

以下の流れで行いました。

まず、トランスサイエンスの題材を何で見せるかを話し合いました。

実際のサイエンスイベントでは、まず一人一人が普段食べ物を購買する際にどのような判断基準を持って、選択しているのかどうかを参加者にワークシートに記載してもらいました。(◯◯を気にして買っているワークシート)

記入した内容を参加者に発表してもらい、模造紙に記入することで、それぞれが持つ判断基準を共有しながら認識する機会を作りました。

具体的な食として、「土用の丑の日にうなぎを食べるかどうか」を問いました。

A「うなぎを食べる」B「似た味のものを食べる」C「食べない」

それぞれの文字を記載した異なる色の紙を用意し、選択肢の紙を手で挙げてもらいました。

会場の意見はその場で集計し、来場者の認識を会全体で把握・共有しました。

その後、うなぎの値段が高い理由として、うなぎの生態を通して市場に出回るうなぎは養殖がほとんどであること、うなぎの天然の稚魚を養殖しているため数が減少していること、トキと同レベルの絶滅危惧種であるという背景を伝えました。

うなぎの代替案として、実際に市場に出回る代替魚の存在や、開発された加工食品とともに、ツイッターなどSNSに挙がるその味の評価を紹介しました。また、北海道大学で行われているうなぎの研究を紹介しながら、科学技術によって改変されるうなぎから考える未来について提示しました。

最後に最初と同じ質問でカードを挙げてもらい、意見の変化があったかを聞きました。

②で挙げたABCそれぞれの選択肢の背景には、「養殖や環境整備技術」「食品加工技術」「遺伝子組み換え技術」といった様々な科学技術が存在します。

私たちの食生活は、好む好まざるに関わらず、科学技術の発展と関連しているということから、消費者は科学技術を知り、科学者は消費者の求めるニーズを知ることが大切である、とテイクホームメッセージとして伝えました。さらに、消費者と科学技術の双方性コミュニケーションの場作りを担う人がサイエンスコミュニケーターであることも伝えました。

《メンバーの役割》

話の方向性も含め基本的な事柄について限られた時間の中で、徹底的に議論して共有した結果、メンバーがそれぞれの役割を自覚して作業を進め、終始、伝えたい内容の軸にぶれることなくイベントを企画運営することができました。

司会進行:平山実季

司会補佐:天野麻友美

タイムキーパー:浅野希梨

アンケート作成:石川公広

チラシ作成:漆山明日美

《イベントを実施した結果アンケートおよび観客や他の班からのコメント》

回答参加者 計27人

  • 参加者の食材選択の機会や環境と選択者を知るための調査アンケート(問1〜4)

食材を選択する上での参加者の環境を調べるために、

参加者の性別(問1)、家族環境を知るため同居人数(問2)、家族構成(問3)、食材購入時の選択者(問4)の調査を行いました。

男女比ほぼ半々(問1)、一人暮らしの人が56%とやや偏っていますが家族同居の方も多数参加が見られました。(問2・問3)

よって、参加者は食する際に食材を選択する機会がある環境にいると予測され、様々な意見をいただける条件は満たしていたと考えられます。

また参加者の74%が自分で食べるものを選ぶと答えており(問4)、本イベントの対象とする”普段何を食べるかを自分で選択できる人”が参加していたイベントであったと捉えます。

<フィードバックを受けた班での反省・総評>

司会進行の評価:

好評であり、言葉遣い等の反省点は十分な準備期間と回数を重ねれば、自ずと解消されるものと考えられます。

構成の評価:

参加者を引きつけるための工夫(カードの使用、事例提示、うなぎから食全体への発展など)、進行については、来場者へも意図が伝わり好評を得ることができました。一方、食や科学技術の倫理的事項など発言や提示に留意すべき点について、班内で準備しきれませんでした。そうした部分について来場者からも指摘が多く、今後のイベントでは改善の必要な部分であると考えられます。

全体の評価:

うなぎから食全体の話へと発展させたいと言う意図を掴んだ来場者にとっては、目的も伝わったと思われます。一方、途中で話題の流れに違和感を持った来場者にとっては全体の構成が想定不足と映っただろうと思われます。(アンケート結果、口頭コメントより推察)

《イベントを実施して学んだこと・発見したこと》

食べ物を買う際に参加者がなにを気にするかどうかの判断や選択肢の結果では、価格や産地や新鮮さなどの商品の見た目・ラベルの情報に関心が一般的に集中する点は想定どおりでした。それに気づかせて、その食品の作られた多様な背景を理解することの重要性またそれが科学技術の理解につながるということを伝えるという、このイベントの目的は達成できたと思います。

ウナギの3択質問に対する回答が、こちらの事前想定とかなり違っていましたが、結果の想定をパターン別にも詳細に検討しておくべきだったと思いました。また、アンケート記述にもあったように、少数意見も切り捨てることなく、参加者の声を丁寧に扱う配慮も必要だったかもしれません。こうした想定ミスの原因として以下のことが考えられます。メンバーの中で意見の共有が進んでくるうち、来場者もこちらの想定に沿った反応を示してくれると無意識に考えてしまった部分があります。今回のイベント実施から、常にメタ意識を見失わないようにして話し合いを進めることが非常に重要であると発見できました。

このイベントは導入アプローチとして食育の手法を参照しました。食育に関わるメンバーがいたことで、既存の方法を基軸におきながら、食育分野に偏らず、サイエンスイベントとして成立するように、メンバー内で議論を重ね、企画実行のための認識の共有を試みました。その結果、参加者に食と科学技術の関わりを再認識してもらうことができたのは、大きい成果だと思います。さらに、今後のイベント開催においては、これらの改善点をふまえ、好評だった点をより発展させ、来場者により満足感の高い会の運営が必要だろうと感じました。実践して初めて、こうした様々な気づきを得ることが出来るとわかったので、トライアンドエラーを重ねる実践の場での経験をそれぞれが意識的に積むことが大切だと考えました。