3. 深める37. World Wide Views
小林 傳司 氏(大阪大学教授)から話があったのは、2008年の秋だったと思う。DBT(Danish Board of Technology;デンマーク技術委員会)の呼びかけで、翌2009年の9月26日に、気候変動をテーマに世界市民会議(World Wide Views;略してWWViews)を、多くの国や地域で同時開催する。ついては、日本でも京都で開催するので協力してほしいというのだ。
どの国や地域でも、同じ日に、同じ情報提供資料に基づき、無作為に選ばれた市民100人がグループに分かれて議論し、同じ質問に回答する形で意見表明するのだという。三上さんと私が実行委員に加わってほしい、そしてグループ討論のときに必要なファシリテーターをCoSTEPの修了者受講者の中から推薦してほしい、というのが具体的な要請であった
(大阪大学と上智大学が主催、北海道大学CoSTEPが共催の形で実施された。ⅹⅹⅵ)
デンマークでの説明会に参加したり、三上さんと分担して情報提供資料を日本語に翻訳するなど、春から夏にかけ忙しく準備を進めていったのだが、疑問も次第に膨らんできた。たとえば、ファシリテーター向けマニュアルに「一言も発しないで議論を進行させられれば、それが理想のファシリテーター」とある。コンセンサス会議に馴染んできた私には、「議論を誘導してはいけないが、適切に言葉をかけることで参加者どうしの議論が深まるよう手助けする」、それがファシリテーターの役目ではないかと思えるのだ。情報提供資料も、とても高度な内容が「むきだし」の状態で記述されており、「これで普通の市民が理解できるのだろうか」との思いを禁じ得なかった。