2015 CoSTEP10周年
CoSTEP私史|杉山滋郎

3. 深める35.
模擬コンセンサス会議

松井氏から私に話があった背景には、私が松井氏と共同で「模擬コンセンサス会議」を実施していたことがある。

私はコンセンサス会議という手法を教育の場に応用することを考え、「模擬コンセンサス会議」という名称のもと、2003年度から北大の全学教育科目(学部1年生を主対象にした科目)として実施していた。コンセンサス会議における「専門家」を「大学院生」に置き換え、「市民」を「学部1年生」に置き換え、そしてファシリテーターは授業の担当教員が務めることで、これから専門教育を受ける学部1年生と、専門家の卵として活躍を始めた大学院生とが、ともに学びあう場を作ろうと考えたのである。

大学院生と学部生が通常の授業時間(90分間)に質疑応答を繰り返すほか、日曜日を丸一日使って「鍵となる質問」や「コンセンサス」の取りまとめを行ない、授業の最終回に「コンセンサス(提言)の発表」も行なう。

初回2003年度は、新田 孝彦 氏(文学研究科教授)を代表とし、石原さんや蔵田氏らが参加する研究プロジェクト「科学技術倫理教育システムの調査研究」の一部として実施させてもらい、テーマは「クローン技術の是非」とした。専門家役の大学院生2名については、栃内さんと蔵田氏に紹介していただいた。

2回目の2004年度は、大学内の助成金を得て、「これからの原子力エネルギーの利用をどうするか」をテーマに、蔵田氏と共同で開講した。佐藤 栄佐久 氏(福島県知事)が、いったん認めたプルサーマルの実施承認を撤回したり、地球環境問題との関係で原子力発電が見直される、そんな時期だった。

そして2005年度には、「どうする? 遺伝子組換え作物・食品」をテーマに、松井氏と共同で開講した。前年の秋に、GMO大豆の栽培を計画している農家の存在が明るみに出て、GMO栽培の問題が大きくクローズアップされていたからである。

GMOの問題に関心を寄せていた吉田 省子 氏(室蘭工業大学非常勤講師)に松井氏を紹介していただき、研究室を訪ねて「模擬コンセンサス会議」の趣旨を説明し、授業計画を作りあげていった。2004年暮から2005年初めにかけてのことである。模擬コンセンサス会議の専門家役として、次の春に大学院博士課程を修了する予定の宮入隆さんも紹介していただいた。

その宮入さんが、小さくて話題を集めていたMac miniを大きな身体に抱え、授業(模擬コンセンサス会議)に遅れて駆け込んできたことがあった。未だに印象に残っている。この宮入さんには、数ヶ月後、CoSTEPのスタッフに加わってもらうことになる。