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選科A活動報告「あなたの信頼はどこから? この水、飲めますか」

2026.9.14

今年、私たちが向き合ったテーマは「信頼」です。
チームメンバーが「信頼」に抱いた共通のイメージ。その中から、特に身近な「水の安全性」と「情報への信頼」を掛け合わせました。

【メンバー】 砂川 宥人,植野 紗希,梶原 洵子,小玉 昂史,藤井 宏美,山崎 裕子

 

揺れ動く「信頼」を体験する

私たちは普段、科学的な情報から安全性を判断します。しかし、科学的な基準を満たしてさえいればよいのでしょうか。本当にそれだけで「安全だ」と信頼できるでしょうか。
科学だけでは割り切れない「信頼のモヤモヤ」を参加者に体験してもらうことを目指し、企画が始まりました。

情報が増えると、「信頼」はどう変わる? 

「水の安全性」を巡る問題について、記者会見という物語を仕立て、少しずつ情報が増えていく構成を企画しました。様々な情報を一つずつ知ったとき、私たちの「信頼」はどのように変化するでしょうか。

物語の冒頭では「飲まざるをえない水」を提示します。
印象的な問題提起となるよう、小道具としてグレーがかった特徴的な色の水を用意しました。

物語の進行とともに、①水の組成、②調査結果のデータ、③リスクの程度、④情報提供者の社会的信頼度、⑤健康被害の実例、の情報を小出しし、その都度、参加者はYouTubeの投票機能を通じて「この水の安全性を信頼できるか」をリアルタイムで投票します。

情報を小出しにしたのは、新しい情報に触れるたびに、それまでの判断が揺れる過程そのものを体験してもらう狙いです。

直感で捉えてもらうために:フィクションの世界と人形劇

架空の世界観で登場人物はパペット人形にしました。人形の動きや声、物語によって関心を惹きつけ、重くなりすぎることなく、前提知識のないフラットな状態から一つひとつの情報に集中できるよう工夫したいという意図でした。

配信画面をそのまま舞台の枠にして、背景や小道具も身近な材料で作れる人形劇は、限られた制作期間にも適した手法でした。
台本係、小道具係、ポスター係、アンケート係に分かれ、制作に勤しみました。特に人形制作では、情報を受け取る側(記者役:靴下人形)と発信する側(議長役:紙コップ人形)で素材を変え、靴下人形はより親しみやすい姿になるよう、丸いシルエットで温かみを意識しました。

情報によって揺れ動いた「信頼」 

参加者の投票結果は、一方向に変化せず、提示される情報によって上下しました。

投票結果から見えてきたのは、「情報が増えれば信頼度が高まる」「リスクを知るほど信頼が失われる」という単純な関係ではありません。科学的なデータに加えて、「誰が話しているか」や具体的な経験談といった要素も、参加者の判断に影響した可能性がありました。また、同じ情報でも、どう受け止めるかは人それぞれです。

客観的な判断材料を提供してくれる科学。しかし人の判断にはそれだけでは割り切れない様々な要素が関わっています。投票結果に表れた「揺れ」そのものが、私たちが参加者に体験してほしかった「信頼のモヤモヤ」だったのではないかと考えています。

そして物語の最後に、さらなるモヤモヤエピローグを付けました。
「どういう意味だったの?」――そんな疑問が参加者にとって「信頼のモヤモヤ」を持ち帰って考えるきっかけになっていたら嬉しいです。

実践を通して見えた課題 

開催後のアンケートでは、揺らぎや自分と他人の違いを感じられたという意見の一方で、物語が進むにつれて「今、どの情報について問われているのか分からなくなった」という声もありました。


架空の世界を舞台とし、複数の情報を段階的に積み重ねる構成だったからこそ、参加者が情報を整理できるような工夫が必要だったと感じます。登場人物の台詞で簡潔に振り返ったり、重要な情報を画面上に表示したりすることで、自分の判断が何によって変化したのかをさらに意識してもらえたかもしれません。

この「モヤモヤ」を科学技術コミュニケーションへ

「信頼」は、単純な「信じる/信じない」では割り切れません。科学的な事実や数値、リスク、情報源への信頼、そして具体的な誰かの経験。異なる情報の間で迷い、自分の判断が揺れる過程をどのように科学技術コミュニケーションとして設計するか。今回の実践では「正しく伝える」ことだけでなく、「人が何を手がかりとして、何を重視して信頼するのか」を可視化し、科学の信頼を取り巻くモヤモヤを経験する機会を提供できたと思います。

本記事は、2026年7月20日(月/祝)に実施した2026年度選科Aオンラインサイエンスイベント「信頼」の報告記事の1つです。CoSTEPの選科Aコースでは、全国各地の選科A受講生が札幌に集まり、オンラインサイエンスイベントをいちから作り上げる3日間の集中演習を行っています。受講生は4グループに分かれ、計4つのイベントを実施しました。他の活動報告も順次公開していきます。ぜひご覧ください。