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天才科学者のひらめき36―世界を変えた大発見物語

2012.9.27

著者:リチャード・ゴーガン 著

出版社:20120400

刊行年月:2012年4月

定価:2000円


 私たちの生活を変えるような発明や発見は、どのようにして生まれたのでしょうか。もちろん、科学者や技術者たちの地道な努力は、科学技術の発展に不可欠です。一方で、偶然の出来事から一瞬のひらめきが訪れ、素晴らしい発見につながることもまれではありません。 

偶然を大きな成果につなげるか、それとも見過ごしてしまうか、この両者の分かれ道になるのは何でしょうか。 

 今回紹介する「天才科学者のひらめき36?世界を変えた大発見物語」には、ニュートンの万有引力の発見やDNA二重らせん構造の解明といった有名な話から、ナイロンやテフロン、電子レンジ、そしてインターネットの開発といった私たちの身近な科学技術の話題まで、36個の様々な大発見物語が描かれています。そして、そのどれもが偶然を味方にすることによって成し遂げられているのです。

 この本の著者は、研究開発に成功するためには3つの要素が必要だと言います。それは、「準備」、「チャンス」、そして「欲求」です。

 最初に必要なのは周到な「準備」です。実験の目的や目指すべき結果は、あらかじめ充分に考えておかなければなりません。ところがどんなに「準備」をしていても、往々にして、想像もしていなかった結果に出会うことがあります。それこそが著者の言う「チャンス」です。偶然の出来事が、思いがけない発見をもたらしてくれるのです。

 企業の研究者だったパーシー・スペンサーは、マイクロ波発生装置の出力を向上させる研究をしていました。彼は装置の周りを歩き回っていたとき、ポケットのチョコレートが溶けていることに気が付きます。マイクロ波について充分な知識のあった彼は、マイクロ波が食品を加熱するのに役に立つ、ということを思いつき、これが電子レンジの開発へとつながっていきます。彼は充分な「準備」をしていたおかげで、偶然の発見を「チャンス」へと変えることができたのです。

 著者はさらに、成功には「欲求」が必要だと言います。著者が考える「欲求」とは、偶然に得られた結果が何なのか知りたいという強い意思のことです。科学者も技術者も時間に追われ、やらなければならない仕事を数多く抱えています。目指していた結果とは違うものが得られたとき、それを必要のないもの、無駄なものとして捨ててしまうか、それともその結果が意味するものが何なのかを強く知りたいと願うか。ここが成功への分かれ道だと著者は強調しています。

 リンゴが木から落ちるのを見ていたのは、ニュートンだけではありません。それ以前にもほとんどの人が知っていたことです。しかし、ニュートンには観察した現象を理解できる基礎知識があり、そのことを深く掘り下げたいという欲求をもっていました。「準備」と「欲求」は、偶然の発見に欠かすことができません。この2つがなくては、偶然何かに気づいても、それを「チャンス」に変えることができないのです。

 研究開発には努力だけではなく、偶然の要素も大きいのです。しかし「準備」を整え、「チャンス」を自分のものとし、知りたいという強い「欲求」があれば、偶然を成功へと導くことは可能なのです。まずはそのための「準備」として、この本を手に取ってみてはいかがでしょうか。

 

 

(2012年度選科生・三輪和弘)