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時計遺伝子の正体

2012.8.28

著者:NHK「サイエンスZERO」取材班+上田泰己[編著] 著

出版社:20110200

刊行年月:2011年2月

定価:1050円


 「体内時計」という言葉は、誰でも聞いたことがあるでしょう。

わたしたちすべての身体に「体内時計」が備わっており、24時間のリズムを刻んでいます。「体内時計が狂っちゃって」など、体調を崩した人がよく言うセリフですが、この「体内時計」がどのような仕組みで動いているのか知っていますか。

この本は、「体内時計」が、実際にはとても大きな概念だということを教えてくれます。実は、人間の身体を構成する小さな「細胞」もそれぞれ「時計」を持っており、「体内時計」は、それら多くの「時計」と関係しながら働いているのです。

さらに、「細胞」の中にあるもっと小さい「遺伝子」にも「時計」を持っているものがあることがわかってきました。「時計遺伝子」と名づけられたこの遺伝子は、遺伝子そのものが24時間のリズムを刻んでいるのです。

現在までに約20種類発見されている「時計遺伝子」ですが、種類により、朝に活発に働くもの、昼に活発に働くもの、夜に活発に働くものなど、多くの違いがあります。

わたしたちの身体を構成するタンパク質を作る遺伝子、わたしたちの身体の中で分泌されるホルモンの分泌量や分泌させる時間帯を決める遺伝子など、活動時間の異なる遺伝子の働きが組み合わされ、わたしたちの生命は維持されています。 一方、血圧を調整する働きを持つ「時計遺伝子」が見つかるなど、「時計遺伝子」の働きが病気の発生にも関係していることがわかってきました。驚くべきことに、アレルギーやガンの発生にも「時計遺伝子」が関係しているのです。まだまだ解明されつくされていない「時計遺伝子」、その正体を解き明かすことは、医療に変革をもたらすはずです。

さらに、最近の研究で、「時計遺伝子」とは違うリズムを刻む遺伝子が発見されました。この遺伝子は、365日のリズムを刻むため、「カレンダー遺伝子」と名づけられました。

わたしたちが生きている地球を思い浮かべてみてください。地球は、24時間を単位として自転し、365日を単位として太陽の周りを公転しています。「時計遺伝子」と「カレンダー遺伝子」は、それぞれが地球の自転や公転と同じ時間を単位として動いています。

リズムを刻む遺伝子の正体が解き明かされていくことは、医療の向上だけでなく、地球上の生命誕生の謎に迫っていくことなのかもしれません。

 

 

(2012年度選科生・中村博志)